日産自動車、北米事業に光明でも拭えない不安 反転攻勢に影を落とす半導体不足と材料費高騰

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オンライン会見で内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は「財務規律を徹底し、新車で価値を創出したい」と述べた(写真:日産自動車)

「事業構造改革を確実に実行しており、その成果は結果として着実に表れている」。5月11日に開かれた日産自動車の決算会見。内田誠社長兼CEOは、構造改革が正しい方向に進んでいることを何度もアピールした。

経営再建中の日産が同日発表した2021年3月期(2020年度)決算は、売上高が前期比約2割減の7兆8625億円、営業損益が1506億円の赤字だった。販売の想定以上の回復や構造改革効果で、売り上げ、赤字ともに従来の見通しを上回った。

2020年度はカルロス・ゴーン元会長時代に抱えた過剰設備を整理する我慢の1年でもあった。現在、スペインやインドネシアの工場閉鎖により世界生産能力を720万台から540万台へ2割削減し、車種数は69から55まで20%減らす計画が進行中だ。当初は2020年度までに固定費を3000億円(2018年度比)削減する目標だったが、実際は3500億円以上削減し想定を上回る結果となった。損益分岐点の販売台数も約500万台から約440万台まで下がっている。

屋台骨の北米で差した光明

昨年の東洋経済のインタビューで内田社長が「台数を大きな重要経営指標として持ってしまい、社内にひずみが出た」と振り返ったように、今後、収益の回復を図るうえで最も重視するのが販売の量から質への転換だ。

日産は2010年代前半、ゴーン氏の下で拡大路線をひた走った。新型車開発の費用を絞った一方で、大量の販売奨励金(インセンティブ)を販売店にばらまいた結果、台数目当ての値引き販売が横行した。その後、市場の伸びが鈍ると、競争力のない新車ばかりの状態となりさらに値引きして売る悪循環に陥る。

結果、かつては営業利益の4割以上を稼いでいた北米は2019年度には赤字に転落した。2020年度は新型車の投入でインセンティブの抑制が図られ黒字化したものの、利益率はわずか1%にとどまる。

日産によると、2020年度のアメリカ事業は台当たりの販売価格が2019年度に比べて3.8%上昇し、販売奨励金は4.6%減ったという。「過度な台数を追うのではなく、販売の質の向上を図るということができている」。アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)がそう自信を見せたように、構造改革1年目で一定の手応えを得ているようだ。

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