1年遅れ、北陸新幹線「敦賀延伸工事」最後の難局 2024年春開業となった敦賀駅周辺を現地ルポ

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敦賀駅の米原方に立つ。高架は都合4線分の幅があり、うち2線は大阪方面に延びる予定の分で、ほど近くをもってプツリと途切れる。今はまだ与党PTが新大阪までのルートを小浜、京都、関西学研都市経由と決め、環境アセスメントの調査へ進んでいるところだ。工事実施計画の認可申請や事業着手時期等はいっさい未定である。一方、もう2線分は地上へ下りてゆく。敦賀駅から約1km先に、全長1.5km、敷地約9ヘクタールの敦賀車両基地が設けられる。

高架下の工事ヤードは、木の芽川に構台を設けて鉄板を敷き詰め、ようやく確保されている。高架の西側には在来線が迫り、逆に東側はわずか60mの位置に河川がある状況は、12階建ての“城壁”を作るには足枷となった。高架の実体ができた部分ごとに上屋の建設に入る。すなわち土木工事と建築工事を並行させて次々と形にしてゆく計画であったが、実際は狭隘さがたたり、別作業のクレーンを配置する場所の確保に難儀し、順番待ちとなった。

だが、現地に立てば在来線ホームとの間に1台、ホームを設ける部分の川側に5〜6台、高架橋が途切れた隙間に2台、振り向いた箇所の切れ目にも1台、車両基地に下りてゆくスロープ部分に6台……。まさに巨大クレーンが集結し、同時進行を繰り広げている有様だった。

回送線高架の途上にフリーゲージの名残

駅から車両基地に至る回送線は、半径400mの曲線と18〜25‰の勾配で下ってゆく。その高架橋工事の先端部分へと場所を移すと、1年半前は更地だった車両基地造成地の中で大小クレーンにパワーショベル、そしてダンプがそこかしこでうごめく様子が望める。

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一方、高架橋の一角に目を向けると、側壁が2カ所ほど三角形のように外に飛び出す格好になっており、おそらくはFGTが地上へと下って在来線に乗り入れる計画だったころの名残と想像された。

当時を振り返ると、2014年10月、JR西日本は敦賀駅構内に技術開発部FGT推進PT敦賀派出GCE実験線(敦賀GCE実験線)を開所しており、試作台車による試験、雪対策に関する技術調査を開始。交直両用で耐雪仕様のFGT試験車両6両編成も2016年度中に走らせると発表した。しかし、車両は製造されることなく、実験線は2017年5月末で閉じられた。

車両基地まで歩を進めると、敷地内には2棟の建屋が建つ。1棟は着発収容庫で7線を引き込むが、バラスト軌道のため現段階では内部全般に土路盤が広がっていた。対する1棟は仕業検査庫で、こちらに引き込む3線はピットを擁するため、型枠を組んでコンクリートを流し込んでいる最中であった。

現況、最大のクリティカルとされた敦賀駅工事においては、見直し後の計画より1.5カ月程度の前倒しで進んでいる作業箇所もある。改めて耳目を集めることになってしまった北陸新幹線だが、2024年春の開業に向けて最後の難局と向き合っている。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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