米国に対抗、中国パートナーシップ外交の正体 国ごとにランク付け、同盟関係と何が違うのか
1990年代、中国の銭其琛外相が繰り返し「いかなる国とも同盟関係を結ばない」と語ったように、中国外交に同盟関係という言葉はほとんど登場しない。中国にとっての同盟関係は、軍事力を優先し、ブロック化を進め、中国をはじめとする東側諸国をつぶすための国家関係だと否定的に捉えられてきた。
国際社会がグローバル化し、国家関係が多様化・複雑化した今日において、同盟関係は冷戦時代の遺物のようなもので、現実に即した「新型の外交関係」が必要であるとしている。それが中国の言うパートナーシップ外交なのだ。
その定義は「互いに相手を敵とせず、内政に干渉せず、共通の政治経済的利益を求め、関係を発展させる」としている。パートナーシップという言葉には、共同で事業を営むなど経済活動の意味合いが強く、中国の場合も経済関係を軸に幅広い国家関係を作るという意図があったようだ。
発端はブラジルとの戦略パートナーシップ
しかし、アメリカから見ると違った風景が見えてくる。アメリカは日本をはじめ、10以上の国や地域と同盟条約を結ぶとともに世界約150カ国にアメリカ軍を派遣・駐留させている。
改革開放政策に成功し、急速に国力を増した中国は、遅ればせながらアメリカ中心の国際関係に入り込もうとしたが、手の出しようがない。中国流パートナーシップは、アメリカ中心の既存の国際秩序を否定するとともに独自の外交世界を作るための苦肉の策ともいえる。
中国がパートナーシップ外交を展開し始めたのは1990年代で、最初にこの言葉を使ったのはブラジルとの戦略パートナーシップだった。その後、ロシアなど関係の近い国などから始めたが、やがて対象国は世界中に広がり、イギリス、フランス、ドイツやEU、NATOや東南アジア諸国、中南米からアフリカ、中東諸国とその数は40を超える。
興味深いのは、相手国によってパートナーシップにつく形容詞が異なっており、はっきりとランク付けがされていることだ。前述のイランやASEANのような包括的戦略パートナーシップは最上級のランクである。その下は戦略パートナーシップ、友好的パートナーシップ、伝統的協力パートナーシップなど、さまざまな種類がある。
その際、親中であるかどうかはランク付けと関係はないようだ。むしろ力のある国の場合に戦略という言葉をつけてランクを上げているようだ。また、「全天候型戦略協力パートナーシップ」(パキスタン)、「全方位戦略パートナーシップ」(ドイツ)など、言葉だけでは理解しにくいケースもある。
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