ホンハイ「EV参入」への知られざる全力疾走 6月末までに工場建設を決めると経営トップが明言

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ホンハイはEVのロードマップを明示している(画像はホンハイのIR資料)

スマートフォンの次は電気自動車(EV)で飛躍を遂げるのか――。

iPhoneをはじめとする数多くの電子機器製造を担ってきた世界最大の設計・製造受託サービス企業、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)がEV製造に向けて猛然と動きを加速している。

「EVはグループの成長ドライバーのひとつとなる」。3月30日、ホンハイの劉揚偉董事長(会長に相当)は2020年12月期の決算発表を行う電話会見でそう語った。

この電話会見の5日前の3月25日、台湾の中心都市である台北のカルチャースポット、松山文創園区に200社を超えるサプライヤー関係者が集まっていた。2020年10月にホンハイが主導して立ち上げたEV開発プラットフォーム「MIH」に参画する企業を集めた初のサプライヤー集会だ。

オンライン上でも1000社あまりのサプライヤー関係者が参加。MIHを率いる鄭顕聡CEOは「高水準、高効率、かつスピーディな運営体制を整え、プラットフォームのメンバーや(自動車)業界のパートナーとともに次世代のEVエコシステムを構築する」と宣言した。

6月に工場建設を決定へ

鄭氏はフォード・モーターの中国子会社副総裁や、フィアット・クライスラー・オートモービルズの中国現地トップを歴任し、中国の新興EVメーカーNIOの共同創業者(2019年に離職)でもあった。40年以上自動車業界に身を置いた人物がホンハイのEV参入のキーパーソンだ。

EVへの取り組みが本格的に明らかになった2020年10月以降、ホンハイの株価は約60%も上がった。そして、パートナー企業も急増している。2020年11月5日にオンライン上でMIHの参画申請を受け付け始めてから、2021年3月末時点で世界約50の国と地域から1300社を超える企業が参加。日本からも村田製作所や日本電産など約20社が名を連ねる。

3月30日の電話会見で劉董事長は「6月末までにアメリカもしくはメキシコにEV生産工場の建設を決定する」と語った。このとき劉董事長は、月間の生産能力が1万台規模であれば「必要資金はおよそ10億米ドル」になるとの見通しも示した。

MIHとそれを主導するホンハイへの期待は高い。日本のある電子部品企業の首脳は「(ホンハイは)スマートフォンなど電子機器の製造で世界のサプライチェーンの中心に存在する企業で、長年の付き合いがある。そこがEVを造ることは可能だろうし、早い段階から協力することでEV市場の成長の恩恵を(自社も)間違いなく受けられる」と狙いを明かす。

東洋経済プラスの連載「鴻海(ホンハイ)EV参入の勝算」で、この記事の全文を無料でお読みいただけます。同連載では以下の記事を配信しています。

鴻海「EV参入」への知られざる全力疾走

 参画企業の“実名リスト”掲載/日本企業が「鴻海のEV」に抱く当然の期待

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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