東芝vsモノ言う株主、再び激突する深刻事情 アクティビスト側の助言役に大物弁護士も

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これに対しても、東芝は強く反論する。「中計は特段変更を行っていない。株主提案の内容には誤解がある」としたうえで、「株主提案は当社のキャッシュフローの使途および内部留保の水準を将来にわたって拘束するものであり、取締役会に当然認められるべき経営上の裁量事項に対する過度な介入にほかならない」という意見を2月17日付のニュースリリースで表明している。

たしかに、東芝は過去の大型買収の失敗を踏まえ、投資効率を重視して比較的小規模な、数百億円規模のM&Aなどを想定していると公式の場で説明してきた。両者がうまく意思疎通できていれば、こうした誤解は解消されそうだが、両社の溝は埋まらないまま、臨時株主総会の開催にまで発展した格好だ。

焦点は議決権行使助言会社の動向に

今後の焦点はアメリカの議決権行使助言会社、インスティチューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスの判断だ。機関投資家に影響力のある両社が東芝側に賛成すれば、エフィッシモやファラロンの提案は厳しくなる。

前回の総会では、ISSもグラスルイスも株主総会の約2週間前に東芝側の提案に賛成し、株主提案に反対する意向を表明。「これで潮目が変わり、ほとんどの機関投資家が東芝側の賛成に回った」(総会関係者)。

機関投資家はさまざまな企業に長期投資しており、一定の議決権行使ルールや助言会社の意見に沿うのが一般的だ。これに対して、モノ言う株主は経営陣に短期的成果を迫り、投資先企業の株価を上げた後、株式を売却して利益を得るのが常套手段で、議決権行使助言会社の判断には左右されないとされる。

東芝は2017年に経営危機に陥った際、6000億円の大型増資によって助かったが、一方で増資を引き受けたのが百戦錬磨のモノ言う株主であり、一般的な企業よりもその比率が高いのが特徴だ。

東芝の上位を占めるモノ言う株主は前回総会では保有比率が合計33%を超えたが、このうち、アメリカのキング・ストリートが持ち分を売却するなど、現時点では計25%程度まで下がっているとみられる。エフィッシモも15%超から9%台に持ち株比率を下げており、ファラロンは5%超とみられる。数字だけでみると、モノ言う株主の影響力は落ちている。

東芝はリストラ効果で業績が回復しつつあり、株価も戻りつつある。1月29日には東証2部から東証1部に3年半ぶりに復帰。1部復帰なら上場全銘柄を対象にした投資資金が入り、株価も上がりやすい。株価が上昇すれば、モノ言う株主は利益確定のために東芝株売却に動き、東芝に対するモノ言う株主の影響はますます小さくなりうる。

東芝とモノ言う株主の対決は、3月の「決戦」が終わっても、すぐに6月の定時株主総会が待っている。そこでは車谷社長の信任をめぐり、再び激突する可能性もあり、両者の神経戦はまだまだ続きそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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