一歩先行く渋谷区「小中学校1人1台端末」の今 Surfaceに更新、教育と行政データの連携へ

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全国に先駆けて2017年9月から区立小中学校の児童・生徒全員にタブレット端末を配付した渋谷区。GIGAスクール構想による「1人1台端末」の動きが本格化した昨年9月には、すでに2代目の端末への更新と新たな教育情報基盤を稼働させ、学校教育のICT化で一歩先を行く。行政データを活用したスマートシティ化の一環として教育データを活用する体制の整備も進めている。長谷部健区長に、教育ICT化推進の狙いや現状、この3年半の間に渋谷区が直面し、これから「1人1台端末」を始めるほかの自治体も経験するであろう課題について聞いた。

エストニア視察で感じたICT化の遅れへの危機感

――渋谷区は3年半前に早くも「1人1台端末」を実現し、教育のICT化を積極的に進めてきました。全国的に端末導入が進まなかった時期に、なぜ動き出したのでしょうか。

世界のICT化の潮流に乗り遅れてはならないという意識がありました。2016年策定の区基本構想でも子どもの可能性を最大限に引き出すために先進的教育を追究することを掲げています。これからの時代の子どもたちに生きる力を身に付けてもらい、幸せになっていってもらう教育にはICTが欠かせないと考え、児童・生徒全員にタブレット端末を配付しました。その際、Wi-Fiでは家庭環境による差が生じやすいことに配慮し、いつでもどこでも学習ができるよう、セルラーモデルを採用しました。

しかし、ICT化の必要性を心から実感したのは、区内の神宮前に大使館があるエストニアを17年12月に視察した時からです。電子国家として知られるエストニアは、ほとんどすべての行政手続きが電子化されていて、パスポート発行なども迅速に処理できます。教育現場も見ましたが、中学生が最先端のフィンテックで使われるブロックチェーン技術を使ったプログラミングの話をしている。これからの世界は、こういう子どもたちが社会に出てくるのだと思うと危機感を覚えました。

――日本の教育、行政のICT化はなかなか進んでいません。

渋谷区は2年前の庁舎移転に合わせて、ICT化を一気に進めました。とりわけICT基盤を全面的に刷新し、教育データについても行政データと一緒に活用できるよう、行政基盤と連携できる教育基盤を整備しました。今は将来のスマートシティ化を見据えて取り組みを進める時だと思います。

教育、行政のICT化が進まないのは、自治体の中で知見のある人材が大きく不足していることに加え、個人情報保護などセキュリティーへの不安や懸念が強いことが理由だと思います。ICTを活用するにあたり、セキュリティーとのトレードオフは避けられませんが、それをやらない理由にしてしまったら、世界、世間の流れに取り残されてしまいます。いかに個人情報を守りつつ、ICT化を推進すべきかを考えなければなりません。

渋谷区長 長谷部健(はせべ・けん)
1972年渋谷区神宮前生まれ。博報堂退職後、NPO法人green birdを設立し、まちをきれいにする活動を展開。原宿・表参道から始まり全国60カ所以上でゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を実施。2003年から渋谷区議会議員(3期12年)。15年4⽉から現職(現在2期目)
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