一歩先行く渋谷区「小中学校1人1台端末」の今 Surfaceに更新、教育と行政データの連携へ
――IT企業が集積した「ビットバレー」渋谷には地の利があります。
意外に思われるかもしれませんが、渋谷区は、財政的に決して裕福な自治体ではありません。今後、税収が伸び悩み、財政状況が厳しくなることを想定した区政運営が必要です。その中で、行政サービスを維持・向上させ、地元にプライドや愛着を持てる渋谷であるために民間の力を借りることは、区長に就任して以降、大きなテーマとして掲げています。教育のICT化を進める前提として、地元のIT企業と連携してプログラミング授業への講師派遣など、サポートを仰ぐことは念頭に置いていました。
――20年9月には端末を更新し、新しい教育ICT基盤も稼働しました。
区の職員は、19年の新庁舎移転とICT基盤の刷新を機にSurfaceを使うようになりました。そして、区立小中学校には20年、新たに「Microsoft Surface Go2」を採用しました。ですので、子どもたちは職員より新しい端末を使っています(笑) 。この端末更新、教育基盤の設計、導入には十数億円もの予算を要しました。
ただ、これからの時代の教育環境や多様化した子どもたち、グローバル化・情報化の加速度的な進展などを考えたときに、ICTを活用してすべての子どもたちの可能性やチャンスを最大化させるための取り組みが必要だと考えると、これはコストではなく投資だと考え、決断に迷いはありませんでした。
テクノロジーは進化していきますが、現状で私たちが行き着いたシステムの設計やノウハウをほかの自治体にも採用してもらえば、迅速かつコストを抑えた導入が可能になります。私たちにとっても、渋谷区と同じICT基盤を利用する自治体が増えれば、スケールメリットによるコストダウンを期待できます。そのため、東京都や23区特別区長会でも、渋谷区のノウハウを積極的に提供することを提案しています。このように多くの自治体と一緒に日本の教育のICT化を前に進めていくことができればと考えています。
(撮影:梅谷秀司)
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制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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