「オンライン授業」3校に学ぶ、成功させるコツ 「現役東大生作家」西岡壱誠さんが感じたこと
このような経験を重ね、こちらの学校では、
宇都宮短期大学附属高校「卒業生が在校生のためにつくる手作り授業動画」
栃木県にある宇都宮短期大学附属高等学校にもお話を伺いました。こちらも昨年の4月、5月にはオンライン授業を実施していたそうなのですが、撮影と配信は先生が学校で準備することができたため、大きな問題は発生しなかったそうです。
Wi-Fi環境が自宅になく、オンライン授業が受けられない生徒に対しては、感染対策がされているWi-Fi 環境の整った系列の大学の校舎や学校のスペースを開放して授業を受けてもいいことにしたそうです。僕は、こちらの学校のスタンスは今後のオンライン授業の参考になると考えています。学校教育においては、家にWi-Fi環境を整備することができず、オンライン授業に参加できない生徒がたった1人であっても、そのままにすることは絶対にできません。すべての生徒が同一条件下にあるという完全なオンライン授業にこだわるのではなく、街のオープンスペースやWi-Fi環境のある場所の提供を受け、そこでもオンライン授業を受けられるようにするなどの柔軟な対応をすることで、よりオンライン授業が発展していくのではないでしょうか。
さらに面白いことに、こちらの学校ではオンラインだからこそ生徒の自主性が見えた部分があったそうです。生配信でホームルームを行っていたそうなのですが、当初は、洋服の指定はなく自由な服装だったそうです。その時に何人かの生徒から、自主的に「ホームルームは制服で受けたい」という意見が上がり、学校側としては生徒の側からそういう意見が出てきたことに驚き、生徒の自主性を褒めるとともに、制服着用のオンラインホームルームを実施するようになったそうです。
また、こちらの学校では、学校においては大変珍しいと思いますが、授業動画の一部をYouTubeにアップロードし、一般の人も見られるようにしていたそうです(https://www.youtube.com/user/utanfjh)。そうすると、その動画を見た卒業生から「自分たちも後輩への励ましのメッセージを動画で提供したい」という連絡がきたのだそうです。
少しでも在校生のためになるなら、社会人になった自分たちが力になりたい、という思いで、連絡がきた。これは非常に示唆に富んでいると思います。現役の生徒が、卒業生という距離の近い存在から、学ぶことができたというのは、とても勉強になる事例であって、このような状況だからこそ、その状況を逆手にとって、従来の学校の形態にとらわれない授業が展開できるという好例ではないでしょうか。
ということで3つの学校に取材をさせていただいたのですが、共通点としては、「オンラインを生かす」教育を行っているということでした。オンライン授業はまだ課題も多くあり、すぐには完全にオンライン化することは難しいでしょう。
しかし、「自由な時間でオンデマンド授業が受けられて、何度も見返すことができる」「オフラインよりも発言のハードルが低い」「先生以外の人から授業を受ける機会に恵まれる」など、多くの利点があるのも事実です。