日本人女性が韓国で自前のビルを持てた秘訣 在韓17年で資産70倍増、居酒屋店主の成功物語
敷地70坪、松本さんが「私の最後の砦」という今回自前で建設したビルは、これまでの手持ち資産に銀行融資を加えて建てたものだ。17年間の居酒屋ビジネスで得た教訓は、韓国は家賃が右肩上がりで高いので「家賃がいらない自前の建物をもたんとあかん」だった。
松本さんはよく在日韓国人と間違えられるが、純日本人だ。大阪の食品卸の会社で26年間働いた。ツアーで韓国を訪れて、韓国にはまってしまった。きっかけは真冬にソウル近郊の水原(スウォン)にある観光スポット「民俗村」に足を運んだ時のことだった。
韓国の伝統楽器のカネや太鼓を4人の男ががんがん打ち鳴らす「サムルノリ」の公演に出くわした。その音に耳を傾けるうちに、身震いがして放心してしまったという。体を震わすようなその音感が忘れられず「私にはひょっとして韓国の血が流れているんかもしれん……」と思うようになった。
また、自分も”ええおばちゃん”になっていたが、おしゃべりと自称する松本さんにとって、観光ガイドを通じた韓国のおばちゃんとのおしゃべりが面白く、何としても韓国語を知りたいと思ったと打ち明ける。それで勤め先が会社合併で消滅したのを機に退職し、韓国行きの念願を果たした。
「多くの日本好きな韓国人が助けてくれたから」
日本人が個人で韓国で行うビジネスは、実は失敗が多い。そのような中で、松本さんが成功した秘訣は、運と決断のよさもあったが「多くの人に助けられたからだ」という。娘のようにかわいがり、「後継者として育てよう」とまで思った韓国人の女性従業員に裏切られたこともあったが、逆に、反日不買運動が吹き荒れた時には韓国人のお客さんに励まされたことも多かった。「韓国にも隠れキリシタンみたいな日本好きの人もたくさんいはるんです。だからがんばれたんです」。
海外での客商売は、日本人相手だけでは成功しない。「誠心誠意、日本人も韓国人もわけへだてなく、お客様は神様です」と松本さんは言う。韓国で長く商売して資産もできたので、韓国での永住権を取得した。「いずれは日本に戻りたいけれど、ここでは頼りにされてるし、やり甲斐があるやないですか。大阪に帰るとただのおばちゃんですからね……」と松本さんは笑う。
コロナ禍での自前ビルでの新装開店は、松本さんにとって大決断だった。長く店をやってきてそれなりに苦労もあったが、今回のコロナ禍は先がみえないだけにいちばん厳しいという。「うちばかりがしんどいんやない」と思って自分を慰めながらがんばっているが、感染者数が増える中で営業時間は夜の9時まで、しかも5人以上の団体さんは入店不可という状況を迎え、苦しい中でのスタートとなってしまった。コロナの早期沈静化を願う毎日である。
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