ローソンが本部社員の「評価指標」を変えた理由 竹増社長「本部ではなく加盟店の利益を追う」

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ローソンの竹増貞信社長は「『店利益基軸経営』に大きく舵を切った」と強調する(写真:梅谷秀司)
コンビニ業界の2020年は、2019年に続いて加盟店との関係改善を迫られる年となった。9月には公正取引委員会が24時間営業の強制などは独占禁止法違反になりうると指摘。取引状況の点検や改善を各社に要請した。
国内で約1万4500店を展開するコンビニ業界第3位のローソンも改善を急ぐ1社だ。社員の意識改革や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた加盟店店舗の営業状況、さらには親会社・三菱商事との関係性について、ローソンの竹増貞信社長にインタビューした。

加盟店で利益が出るからこそ本部がある

――ボーナスを査定する際の全社のKPI(評価指標)から2019年度に本部の売り上げや利益の項目を外し、2020年度より加盟店の利益を採用したそうですね。​

これまで本部社員は本部の売り上げ・利益を追ってきた。だが、コンビニの店舗数は飽和状態だといわれ、一方で人件費が上がっていく。食品ロスの問題にも向き合わないといけない。そこで一度立ち止まり、加盟店の経営をしっかりしたものに持っていく必要があると考えた。

SV(スーパーバイザー。加盟店に経営指導する本部社員)の指導では、加盟店利益に焦点を直接当ててアクションを取るということがなかった。それはKPIに含まれていなかったからだ。今後は「加盟店経営をこう改善してはどうか」という仮説を立て、それを実行する姿に本気でなっていく。そのような「店利益基軸経営」に大きく舵を切った。

加盟店オーナーを最重要パートナーとして一緒にビジネスを進めていくのがフランチャイズ(FC)ビジネスの一番の要諦。加盟店で利益が出るからこそ本部がある。それらすべてを包含したメッセージが店利益基軸経営。店利益を基軸に本部を経営したチェーンはなかったので、ローソンが初となる。

――加盟店や社員の反応はどうですか?

店利益を改善するには、顧客による評価の改善が必要。それは加盟店の実情に寄り添って1店1店オーダーメイドで経営指導しないと成しえない。

よって店利益基軸経営について、加盟店から「それはおかしいのでは」と言われることはないと思う。社員からはいろいろなメールが僕のところに直接来た。「こういう仕事がしたいんだ」とポジティブに評価してくれる声もある。

店利益をKPIに採用した後にコロナ禍となった。第2四半期(2020年6~8月)は売り上げが前年の水準にまで回復していないにもかかわらず、店利益は回復した。10月には店利益が前年比で1割増となっている。

僕は4月に「今はとにかく背を縮めて感染防止策を取って営業を継続できるようにしよう。コストを削って店を存続させよう」と発信した。それで店は「筋肉質」になり、9月以降は品ぞろえを充実させてきた。

――公正取引委員会はコンビニ加盟店と本部の関係に関する実態調査報告書を2020年9月に公表し、コンビニ各社は11月に自主点検の結果と改善計画を公取委に報告しました。

公取委の指摘は、特に独占禁止法の観点からの改善項目が並んでいた。当然しっかりと受け止めて改善しなければならない。これは店利益以前、FCビジネス以前の問題。徹底的に見直したうえで、店利益に焦点を当て加盟店オーナーと一緒に事業をやっていく。

最初の契約時に本部としては説明したつもりでも、受け手であるオーナーはそのように受け取っていなかったのではという指摘も公取委の報告書ではされている。本部社員の教育システムや習熟度の確認も含め、さらにしっかりしたものにできないか検討している。

この記事の続きはこちら。東洋経済プラスでは「コンビニの袋小路」として、以下の記事も配信しています。

①24時間営業はもう続けられない
②「見切り販売」はなぜ浸透しないのか”
③1分でわかる!公取調査で判明した加盟店の実態
④コンビニ経営を見限る加盟店オーナーたち
⑤ミニストップ、背水の陣で挑む「脱コンビニ会計」
⑥人事評価に翻弄される“哀しき本部社員”
⑦ローソン竹増社長「本部ではなく加盟店の利益を追う」
遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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