「21世紀型教育」の推進、海外と日本の決定的差 米国の公立校「ハイ・テック・ハイ」の衝撃

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そこから一歩、前へ踏み出すために、今すぐにでも学校が取り組めることは何か。竹村氏はこう答える。

「いちばん大事なのは、子どもたち1人ひとりが学校やクラスから『受け入れられている』と自信を持てるようにすること。子どもたちが帰属意識を持てる学校運営や学級づくりが不可欠です。不登校やいじめの問題もここの脆弱さに原因があると思っています。

具体的には、自分の意見を安心して言える安全な場として、先生と一緒に答えのない問いについて少人数のグループに分かれて話し合うなど、哲学対話の時間を設けてみるのも1つの方法です。授業のカリキュラムを変えなくても、道徳や総合的な学習の時間を活用すればできると思います」

その次のステップとして取り組みたいのは、Choice & Voice(選択と意見)だ。

「学校生活の中で、子どもたちが自らの得意なことや関心をベースに選択できる局面を増やしたい。例えば数学なら、問題によっては複数の解法があります。自分はどの解法を選んだのか、その理由は何かを生徒同士が話し合い、その中で『なるほど、そういう考え方もあるのか』と気づくというような形で、経験学習的な深い学びのサイクルを授業の中に取り入れるといいと思います。

理想としては選択肢もたくさんあったほうがいい。体育であれば、競技性のあるスポーツや、競技性のないヨガやダンスなど複数の選択肢を用意して選んでもらう。自分で下した決定ならば、その選択に責任を持つようになるし、うまくいかなかったときも他者のせいにしたり、言い訳したりすることがなくなるはずです。

こうした土台がないと、探究学習なども単なる調べ学習のような形だけのものになってしまいます」

 開かれた学びの場をつくり、働き方改革にもICTの力を

日本のICT教育については、「相当遅れていますが、1人1台の端末とWi-Fi環境が今年度中に整備されることで、やっとスタートラインに立てます」と話す。問題は、教える側の人材育成をどうするかだ。

「ICTの扱いは子どものほうが得意。ですから、先生たちは基本を押さえつつ、ICTの得意な生徒の力をどこまで借りていくかがポイントになります。また、企業や地域住民など外部の力を活用することも大切です」

例えば、米国のある公立高校では、生徒がクラブ活動の一環としてパソコンの修理を行っており、自校のパソコンだけではなく他校のものも引き受けているそうだ。しかも、その活動を半事業化しており、受け取った対価は学校のその他の活動に還元している。ICTスキルを高めながら社会との接点も持てるという好循環を生む取り組みで、地域からも好評だという。

「ここにIT企業のサポートが入ってもいいし、パソコンが得意な地域住民が加わってもいい。いろいろな人の力を借りて開かれた学びの場をつくっていくことが重要です。日本も文部科学省がつくったコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)(※3)があるわけですから、利用しない手はありません。

子どもたちも教科書の学びと社会の関連性がリアルに見えたほうがわくわくしますよね。出前授業も悪くないのですが、もう少し長期的かつ日常的なつながりが必要です。もともと日本には互いを思いやるチームワークという強みがある。ここに、各自の個性や得意なことが生きる協働性も加われば、世界最強の開かれた教育が実現できると思います」

※3 学校と保護者や地域住民が一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める法律(地教行法第47条の5)に基づいた仕組み

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