「21世紀型教育」の推進、海外と日本の決定的差 米国の公立校「ハイ・テック・ハイ」の衝撃

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確かに彼が言うような授業でじっくり学べたら楽しいだろう。しかし実際、そんな学校があるのだろうか――気になった竹村氏は動き出す。日本のオルタナティブ教育のほか、米国、イタリア、シンガポール、イスラエル、韓国の教育現場の視察を始めたのだ。北欧諸国をはじめ世界十数カ国の教育先端事例の調査、研究も行った。

そこから見えてきたのは、受験対策や偏差値に偏った従来型の教育から、非認知能力の育成を重視した教育への転換が急務だということだった。

「変化の激しい時代において活躍できる力を身に付けるために必要なのは、1人ひとりの興味に合わせて『心身頭』を統合的にバランスよく育む『ホール・チャイルド・アプローチ』という学びの考え方。こうした21世紀型の教育を格差なくどんな子どもも受けられるようになってほしい。

日本にも以前から『全人教育』や『知・徳・体』といった教育思想がありますが、今の大学受験から逆引きした教育では、圧倒的にプライオリティーが国語、算数、理科、社会、英語に置かれてしまいます。この心身頭のバランスを欠いた教育から抜け出さない限り、新学習指導要領が強調する『主体的・対話的で深い学び』の実現は難しいと思います」

誰もが抱いていたモヤモヤの正体

米国の学校を視察した際のこと。「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子どもたちにとって必要な教育とは何か」というテーマを掘り下げた、ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』に出合った。その舞台となったのが、カリフォルニア州サンディエゴのチャータースクール(※2)「High Tech High(ハイ・テック・ハイ)」だ。

※2 保護者や教員、地域団体などが、州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける公立の初等中等学校

米国のチャータースクール「High Tech High」

「High Tech Highは、プロジェクト型学習を中心に、ホール・チャイルド・アプローチを実践する学校。まさに教科横断型の授業を行う公立校があると知り、衝撃を受けました。日本の公立校でもできない理由はないはず。まずはこの先端事例を日本の教育ステークホルダーに広く知ってもらい、これからの教育について考えてもらうきっかけをつくろうと、『Most Likely to Succeed』の上映会を日本で開催することにしました」

生徒たちの作品が並ぶ「High Tech High」の校内は、まるでアートギャラリーのようだ

2016年から始めた上映会は、すでに500回以上(開催支援先の上映を含む)、45都道府県で開催された。上映後には鑑賞者と対話する機会も設けている。

「驚いたのは、保護者や学校の先生だけでなく、行政の方やビジネスパーソンなど幅広い層の方が参加され、上映後には毎回活発な議論が交わされること。皆、今の学校教育に対して同じようなモヤモヤを感じていることがわかってきました」

『Most Likely to Succeed』上映会後の様子

不登校に課題を感じている人もいれば、ICT教育の遅れを問題視する人もいるなどモヤモヤの切り口はさまざまだが、共通項は「日本の学びはこのままではいけない」という危機感だ。

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