プログラミング授業の作り方と教材選びの要諦 ロボット?アンプラグド?教科との連携は?

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「考え方としては、使うことのできる環境から単元を選ぶ方法があります。例えば、3年生から始まる理科では、実際の社会ではデジタル機器を用いるであろう活動をさまざま行いますので、micro:bit※1などのワンボードマイコンの利用が考えられます。基礎的なコンピューターの使い方ができていれば、3年生でもデジタル温度計などを1~2時間程度でつくれます。そうやって体験を積み重ねていけば、6年生の『電気の利用』と絡めて『総合』の時間で『便利な電気製品を考えよう』といった探求活動をすることも考えられます。そうすると、時間も多めに確保できるので、さまざまな工夫を凝らした電気製品モデルのプログラミングに取り組めます」

「教科」の単元とプログラミングを結び付ける必要性を説くのは、全国の教員・教育機関にプログラミング教育の研修や教材を提供するNPO法人「みんなのコード」の代表理事、利根川裕太氏だ。

「大前提として、全国約2万校、約637万人(2019年)の児童すべてに、セーフティネットの意味を含めたプログラミング教育をするのが、公教育のあるべき姿だと思っています。でも、約40万人いる先生たちはプログラマーでもエンジニアでもありませんし、コンピューターに苦手意識を持つ方もいらっしゃるでしょう。そうした先生方でも取り組みを始めるためには、先生方がすでに慣れ親しんでいる既存の教科の単元でプログラミングを活用することに一定の必要性はあると考えています。ここを起点に先生も子どもたちもコンピューターの可能性に気づき、子どもたちがSociety 5.0時代を生き抜く力を養えるようになっていくことが大切だと考えます」

※1 micro:bit(マイクロビット):英国BBCが中心となって開発した教育用小型コンピューターボードで、英国ではすべての11~12歳に配布している。センサーが搭載されており、明るさや温度の変化に応じた動きをプログラミングできる。日本では2000円程度で入手可能。

実践では難しさが際立つ「アンプラグド」

授業への組み込み方に関しては、3氏それぞれ考え方が異なることがわかったが、裏を返せば、各学校の現況に応じて当てはめやすい方法を選べばいいともいえる。では、教材となるツール選びに関してはどうか。

3氏の意見を紹介する前に、プログラミング教育のツールについて簡単にまとめておこう。ツールの種類は、大きく以下の3つに分かれる。

「アプリ系(プログラミング学習ソフト)」
「ロボット系」
「アンプラグド系」

「アプリ系」には、絵やブロックを使ってゲーム感覚でプログラミングができるビジュアルプログラミングや、テキストによってプログラミングをするものがあり、前者で有名なのがScratch※2やViscuit※3。後者はIchigoJam※4などだ。「ロボット系」は、組み立てたレゴなどのロボットキットをプログラムで動かすことができる。「アンプラグド系」はパソコンなどの電子デバイスを使わず、カードなどのアクティビティーを構成することでプログラミングの考え方を学べるツールだ。

※2  Scratch(スクラッチ):MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで開発されたビジュアルプログラミング言語。カラフルなブロックを感覚的に操作するだけでアニメーションやゲームなどをつくることができ、そのままオンラインで世界に公開することも可能。無料。

※3  Viscuit(ビスケット):原田康徳氏によって開発されたビジュアルプログラミング言語。文字は一切使われておらず、お絵かき感覚でプログラミングできる。無料。

※4  IchigoJam(イチゴジャム):プログラミング専用子どもパソコン。モニターとキーボードをつないでプログラミングする。LEDボードやロボット、ドローンなどさまざまな拡張機材があり、多彩な学びが可能。2200円。拡張機材は1000円から1万3000円程度。

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO 松田孝
東京学芸大学卒業、上越教育大学大学院修士課程修了。早稲田大学大学院博士後期課程在籍中。東京都公立小学校教諭、狛江市教育委員会主任指導主事(指導室長)、小学校校長を3校歴任後辞職。現在総務省地域情報化アドバイザー、群馬県ICT教育イノベーションプロジェクトアドバイザー、金沢市プログラミング教育ディレクター等も務める。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』(くもん出版)、『プログラミングでSTEAMな学びBOOK』(フレーベル館)がある
(撮影:今井康一)
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