病休代替「フリーランスティーチャー」の正体 ボトムアップの「働き方改革」で教員を救え!
ただ、20年度から法令が変わり、講師は『会計年度任用職員』となりました。同一労働同一賃金化に向け、時間講師にも期末手当が与えられるなど、制度面での改革が進みつつあります。こうした講師の状況変化はあまり認知されていないので、今後も啓発していかなければと思っています」
「教員の働き方を変えたい」という思いには、過去の経験も影響している。
「教員になりたての頃、50代の先輩教員が遅くまで残業しているのを見て、30年も残業し続けなければならない仕事なのかと衝撃を受けました。また、大失敗してノイローゼ気味になったことがあり、病気休職は誰にでも起こりうることだと深く理解しています」
不登校のような苦しい気持ちを抱えていた時期、休職には至らなかったものの、「オンラインゲームを10時間も続け、朝になったら学校に行くという生活を続けていました」と、打ち明ける。
幸い、その時間は無駄にはならなかった。ゲームを通じて人脈や視野が広がり、それが落ち込みから立ち直る契機になったほか、学級運営に「ゲーミフィケーション」の要素を取り入れられるようになるなど、教員としての収穫もあったという。
即戦力となる「講師集団」をつくる
それだけではない。ゲームにハマったことで、自身の働き方改革が進んだ。
「1秒でも早くログインしたかったので、定時で帰るようになりました。しかし、周りに迷惑をかけてはいけないので、徹底的に効率よく仕事を進めることにしたのです」
例えばテストの採点。テスト中に丸をつけていけば、後は点数を転記するだけで済む。児童にとっても、正解はすぐに評価され、不正解ならその場で再考できるというメリットもある。当時、生活指導主任だったので、学年会などは「勤務時間内に終わらせましょう」と同僚と合意形成する形で根回しするなどスムーズな運営を図った。
「これまで教員の仕事は足し算で増え続けてきました。今年は新学習指導要領への移行とコロナ禍が重なり現場の教員の負担はさらに増えていますが、そんな今こそ『引き算』で仕事を見直すべき。コロナ禍で運動会を簡略化して『これでもうまくいくじゃないか』と皆思ったはずです。実は文部科学省も、仕事を外部に委託することを認めているので、やろうと思えば『引き算』はもっとできます」
しかし、文科省や教育委員会から下りてくる働き方改革の指針を現場で実現するには、それぞれの学校が長年培ってきた伝統や文化を変えることが求められるため、なかなか思うように進んでいない。
こうした中、田中氏はボトムアップでの変革を推し進めるべく、また1つ新たな挑戦を考えている。
「即戦力となる教員のコミュニティーを立ち上げ、適材適所により担任不在で困っている学級の子どもたちや教員を助けたい。プロボクサーや一級建築士など専門職と並行する講師や、育児を大事にするため時間講師になった男性など、すでに12人くらいフリーランサーの教員仲間がいます。講師と学校側との交渉に私が同席し、働きやすい条件を引き出すことも考えています。
また、教員志望の学生が減少傾向にある今、改めて教員という仕事の魅力を学生に伝え、志望者を増やしていきながら同時にサポートできる体制もつくっていきたいですね」
教員が働きやすい環境でパフォーマンスを発揮すれば、それは必ず児童たちにプラスに働く。田中氏をはじめとしたフリーランスティーチャーの存在に、今後さらに期待が集まりそうだ。
(写真はすべて田中光夫氏提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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