岐路に立つグロソブ、修正を迫られるPIGS国債の大量保有

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 「ユーロ圏債券市場は再び安定に向かう可能性が高い」という2月の見通しを前提とすれば、PIGS国債はむしろ押し目買いという選択肢も考えられるところだが、実際の動きは「売り」だった。なお2~3倍前後のオーバーウエイト状態であることや、投資家の不安も高まっていることから、保守的スタンスを取らざるを得なかったようにも見える。

テーマとして打ち出す「長期円安」はいまだ現出せず

昨年来のグロソブの動きを見て言えることは、まず高利回り追求の運用戦略が必ずしも奏功しなかったことである。さらなる分配金引き下げを避けようと、リスクの高いPIGS国債を極端にオーバーウエイトしたが、為替要因も含めて裏目に出た。そして、足元ではその戦略を修正する局面に入っている。

基準価額の水準などから考えれば、分配金引き下げがいつ行われても不思議はなく、「ギリシャ問題」など依然、先行きは不透明な情勢が続きそうだ。

また、グロソブの運用成績はベンチマークであるシティグループ世界国債インデックスをかなり下回っている。課税前分配金再投資換算基準価額は2月末現在、1万3282円であり、ベンチマークを1000円以上下回っている。97年12月の設定以来、運用成績は芳しいとは決していいづらい。

そもそもグロソブは、長期的な円安を基本的な大テーマに掲げて外債に投資してきたが、現時点においては設定時に比べて大幅な円高という状況。97年12月の設定当時は1ドル=127円台、1ECU(欧州通貨単位=ユーロの前身)=141円台だった。ユーロは08年7月には169円台という高値を示現したものの、その後、一気に「バブル崩壊」した格好。設定から12年経って、今のところ長期円安という流れはまだ現出していない。

また、グロソブは「高い信用力」のソブリン債券投資を売り物にしてきたが、PIGS国債投資では、ソブリンの信用力に対する評価に課題を残したといえるだろう。

「原則として格付けがA格以上のものに投資する」という方針を採っており、PIGS国債もその範疇にあったことは確かだが、金融危機後の不安定な経済情勢下で大胆なオーバーウエイト戦略を採った挙げ句、ソブリンリスクのボラティリティに翻弄された形だ。

グロソブでは格付けを表記する際、ムーディーズとS&Pの格付けのうち、上位の格付けを採用している。だが、実際の国債利回りへの影響を考えた場合、むしろ下位の格付けを採用するほうが、より保守的な運用が可能になると思われる。
(中村 稔 =東洋経済オンライン)

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