山口達也への強烈すぎる批判が本質ではない訳

個人擁護の必要はないが要所が抜け落ちている

まるで「『山口さんが重度のアルコール依存症』という前提がないと、台本が成立しない。番組が盛り上がらない」とでも言うような構成の番組がほとんどだったのです。

今回の一件で最も重要なのは、「飲酒運転の危険性を示し、抑制につなげること」であり、「山口さんがアルコール依存症かどうか」ではありません。「追突された運転手にケガはなく、乗用車に傷もほとんどついていない」という事実を伝えつつ、「命を奪う大事故となる危険性も高かったこと」を伝える姿勢が求められていたのではないでしょうか。

だからこそ、「山口さんがアルコール依存症かどうか」にこだわり、証拠のような情報を積み上げるメディアの悪意を感じざるをえません。みなさんが賢明なビジネスパーソンなら、そんな番組優先の方針で生まれた悪意に乗せられて猛批判することは避けてほしいのです。

転落劇は数字を稼ぐ重要なコンテンツ

メディアが山口さんを重度のアルコール依存症として扱いたい理由は、それだけではありません。

「人気アイドルとしての活躍」「不祥事で所属事務所を退所」「今回の事故」という流れをストーリー仕立てにして、転落劇として強調していたのです。さらに、アルコール絡みのトラブルという観点から、「離婚の原因も飲酒だった」と報じるメディアも少なくありません。しかし、2年前の不祥事による被害者女性、今回の追突事故被害者、山口さんの元妻と子どもは、このような報じ方を望んでいるとは思えず、メディアによって再び傷ついてしまった可能性もあるでしょう。

そもそも転落劇のようなコンテンツは、テレビ、ネット、雑誌などのメディアを問わず、「視聴率、PV、部数を稼げるコンテンツ」とみなされ、量産されているものです。「人の不幸は蜜の味」という言葉があるように、メディアは見る人の悪意を引き出すコンテンツで稼いでいるところがあり、そんな背景を知っている人は批判の声を挙げません。「豪邸を売却したお金の多くは元夫人に渡して、家賃8万円の苦しい生活を強いられている」などの事故とは関係のない情報を伝えるメディアが多いことからも、数字を稼ごうとしている様子がうかがえます。

その他にも、「TOKIOメンバーが過去に語ったコメントを持ち出して、『山口さんは裏切り者』という印象を加速」「復帰への思いがにじみ出た週刊誌のインタビューを紹介したうえで、意思の弱さや性格の甘さを指摘」などの作為的な構成が散見されました。

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