温室効果ガス25%削減に挑む--環境に優しい複写機を追求するリコー、トナーの材料も進化
自社グループでのCO2削減に加えて、最近になって強化しているのが、製品出荷後のCO2排出削減だ。09年3月には製品のライフサイクル全体で排出するCO2排出総量を20年までに30%、50年までに87・5%削減する目標を掲げた(00年度比)。
現在のところ材料をリサイクルしたり、中古複写機を再生して販売することがその柱だが、次の目玉も用意されている。昨年11月デビューした、バイオマストナーだ。
トナーの成分のうち8割がバインダー樹脂と呼ばれる接着剤。バインダー樹脂は熱により溶け、紙に色の成分を固着させる機能を持つ。現在、この樹脂は石油から作られているが、石油は言うまでもなく有限。将来の石油価格高騰をにらんだうえで、他の材料で樹脂を作れないか、90年代から代替材料の研究が始まった。
「環境への配慮とコストメリットの両方が求められ、一筋縄ではいかなかった」(機能材料開発センターの小番昭宏リーダー)。
バインダー樹脂には相反する二つの特性が求められる。温度を上げすぎなくても溶け出すこと。それでいて、保管時には容易に溶けないこと。消費電力を抑えつつ、暑い地域でも保管に耐えうる品質が必要というわけだ。「融点をかなり狭い範囲にとどめる必要がある」(小番氏)。
家畜の飼料、木の根、使用済みPETボトルなど片端から試したところ06年に、飼料用のトウモロコシの一種を使うことで、従来品とまったく同等の性能を持つバイオマストナーを作ることに成功した。
しかも、植物はCO2を吸収して成長する。そのため、コピー済みの印刷物から引き剥がしたトナーを焼却処分してCO2を排出しても、成長時のCO2吸収と相殺され、CO2排出量はゼロと計算される。製品ライフサイクルにおけるCO2排出削減にも絶大なインパクトを持つわけだ。