豊肥線再開、「SL復活」で豪雨被災路線の応援を 肥薩線の列車走らせ観光振興に役立ててほしい

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他方、復旧が急がれる南阿蘇鉄道の列車も、運転再開の暁には、肥後大津への乗り入れが検討されていると伝えられた。立野、肥後大津と2回の乗り換えを極力、解消しようという考えで、歓迎される。南阿蘇鉄道の所有車両が限られる(一般用は5両のみ)ため、JR九州のディーゼルカーの高森乗り入れが現実的だろう。

南阿蘇鉄道との接続駅、立野駅を発車する特急「あそ」(筆者撮影)

南阿蘇鉄道が走る阿蘇の南郷谷は、阿蘇山への主要な登山口となる北側の阿蘇谷と比べて、いささか影が薄い。立野―中松間の運転再開を待たずとも、豊肥本線の運転再開を機に観光振興を図りたいはずだ。

そのためには、あまり観光には活用されていなさそうな「南阿蘇ゆるっとバス」の改善がまず必要。肥後大津や立野、中松での列車との接続も、今ひとつ便利ではないのだ。熊本空港―肥後大津駅間の無料シャトルバス(空港ライナー)との連携も図りたい。

被災路線から列車の融通も?

JR九州は「あそぼーい!」のように「乗って楽しむことを目的とした列車」を「デザイン&ストーリー列車(D&S列車)」と総称。観光路線や風光明媚な路線に走らせ、地域振興と増収を図っている。

「あそぼーい!」も豊肥本線のD&S列車であるが、不通区間があった頃は阿蘇―別府間で運転するほか、他線区へ貸し出されて運転されることがあった。ディーゼルカーであるため、融通が利くのだ。

九州では豊肥本線の全線運転再開の約1カ月前。今年の7月豪雨により久大本線、肥薩線、くま川鉄道などが大きな被害を受けた。これらの路線は橋梁が流出するなどしており、治水事業と並行して実施しなければならない関係もあって、復旧までには数年かかると見られている。治山事業と並行作業となったため、4年以上かかった豊肥本線と事情は同じだ。

久大本線や肥薩線は重要な観光路線であり、超豪華列車「ななつ星in九州」の運転経路にもなっていた。もちろんD&S列車も運転されていた。

久大本線ではD&S列車の元祖とも言える特急「ゆふいんの森」が、日田―豊後森間が復旧した8月8日より、さっそく博多―豊後森間で運転を再開。豊後森―由布院間の列車代行バスとつないで、由布院へのアクセスを確保したほど。今は苦しいとはいえ、観光輸送の比重、鉄道が貢献する観光振興への期待は大きいのだ。

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