国際数学オリンピック金メダリスト中島さち子氏が語る「STEAM教育の本質」 「未来を生き抜く力」はプロジェクトで習得せよ

STEAMは教科ではなく、マインドセット
日本人女性初の国際数学オリンピック金メダリストであり、プロのジャズピアニストとしても知られている中島さち子氏。今ではSTEAM教育家としてワークショップや講演などで精力的に活動し、2025年大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーの1人にも選ばれている。STEAM教育の申し子とも呼ぶべき彼女の話からは、STEAM教育の重要性が浮かび上がってくる。
「海外ではSTEAM教育を『研究者のように考え、アーティストのようにつくる』と表現することが多いんですが、そんなに難しいことではありません。教科書や模範解答が用意されていない一般社会の中で、自分で問いやプロジェクトを立ててそれを解決していく。その解決に向かうプロセスの中で、勉強のための勉強をするのではなく、ワクワク感を持って取り組みながら学ぶということです。STEAM『教育』とは言いますが、STEAMという各教科を学ぶというより、学びの姿勢やマインドセットを伝えることに近いかもしれません」

中島氏が委員を務める経済産業省の「『未来の教室』とEdTech研究会」が取りまとめた提言でも、学びのSTEAM化のことを「一人ひとり違うワクワクを核に、『知る』と『創る』が循環する、文理融合の学び」と表現している。つまり、研究者のような探求やアーティストのような創造のための一連の「プロジェクト型学習」がSTEAM教育の神髄ということになろう。これは、前編でNPO法人CANVASの理事長石戸奈々子氏が、プログラミング教育は「プロセスに学びがある」と指摘していたことと重なる。ではこのプロジェクト型学習のポイントはどこにあるのか。