「クイズ!脳ベルSHOW」が超人気番組になれた訳 飲酒にカンニング「何でもアリ」なBSの異端児

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そうして生まれた名物企画の1つが、(T)叩いて(K)かぶって(J)ジャンケン(P)ポン、「TKJP」だ。長州力、前田日明、スタン・ハンセンらレジェンドプロレスラーが本気でTKJPをする姿は、ツイッターをはじめ局地的に大きな話題を呼び、長州力の「形変えてしまうぞ」は、2018年秋、この特番の武藤敬司戦で生まれた名言である。

「同業者から『なんか楽しそうでいいなぁ』なんて言われますけど、楽しくするもしないも、その人次第じゃないですか。どの場所にいたとしても、どんな環境にいても、結局は自分次第だと思うんですね。どんな仕事でも番組でもいろいろな見方ができるし、視聴者の皆さんに楽しんでもらう自由、余白は作りだせると思います」(谷口氏)

「昔のテレビの自由さ」体現する稀有な番組

40代から90代まで、バラエティが豊かすぎるゲストたちが入り乱れる姿は、どこか河田町時代のフジテレビの雰囲気を想起させる。このときのフジテレビは、テレビマンたちが周辺の荒木町や四谷などの飲み屋に繰り出しては、「職業に貴賤なし」よろしく、多様な人間とクロスオーバーしていたことで有名だ。笑うポイントがバラバラだったのは、バラバラな人種が好き勝手に、同じ空間をともにできる自由さが渦巻いていたから――。

そう考えると『クイズ!脳ベルSHOW』は、テレビが面白かった、いや、今なおテレビが持つ面白さを再認識させてくれる数少ない生き字引なのではないだろうか。

1000回も続くと思いましたか? そうMCの岡田に聞くと、「続くとかあんまりそういうの考えて番組やったことないんで……。細々やっている感はあったので、なんかちょっと続きそうな予感もあったんかなぁ?」と、まるで実感がない様子。

では、1000回放送を迎え、「5年作ってきて手ごたえは?」と裏方である谷口氏に尋ねると、「まだない」と笑う。つかみどころのないこの余白。『クイズ!脳ベルSHOW』は、いつ見ても、テレビの自由さを思い出させてくれる。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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