夏の株高に賭ける人が無視する「3つのリスク」 今年も「サマーラリー」はやって来るのか?

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雇用統計をはじめ、5月以降の経済指標は確かに大幅な回復を見せてはいる。だが、前年比で見るとまだまだ落ち込みは厳しい。少なくとも、株価が史上最高値の更新を続けるような状況ではない。

それでも、同国の株式市場に対する資金の流入が続くのは、結局、「他の市場がアメリカよりも魅力的でないから」にほかならない。例えば、為替市場で米ドルは明確な方向性を失っているし、商品市場は金や銀などを除けば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、需要の落ち込みが全体的に上値を重くしている。

さらに、債券市場を見れば引き続き資金は入ってきている。だが、大規模な経済対策に伴う財政赤字の大幅な拡大が予想されている中で、積極的に資金を振り分けることは躊躇されるという状況だ。このように、結局のところ多額の投機資金を振り向けられるのは、アメリカの株式市場しかないというのが実際のところなのだろう。

そうした足元の経済の実態との乖離が進む中でのいびつな上昇だけに、何か大きな不安材料が出てくれば、一斉に市場から資金が引き揚げられることもあり得る。このままサマーラリーを継続するためには、少なくとも現在アメリカ経済が直面している3つのリスク、すなわち「米中問題」「新型コロナウイルスの感染再拡大」「個人消費の低迷」をうまく克服している必要があるはずだ。

最終的には「米中貿易合意破棄」も?

3つのリスクを1つ1つ見ていこう。まずは米中問題だ。中国は6月30日、香港国家安全維持法を正式に制定した。これで香港をめぐる1国2制度の方針は、事実上崩壊したといっても過言ではない。

中国問題の専門家ではないので、なぜ欧米の反発が強まるのが目に見えている中で法案制定を強行した背景までを奥の奥まで考察することはできない。だが、こうした行動に打って出た以上、この先予想されるアメリカなどからの制裁圧力に対しても、断固として対抗していくのは間違いない。

米上院は7月2日、香港の自治侵害に関わった中国当局者と取引した金融機関に対して制裁を科す法案を、全会一致で可決した。この前日には下院を通過しており、ドナルド・トランプ大統領の署名を待つばかりだ。

この法案が実施に移されれば、当局者の海外資産が凍結される可能性もあり、ビザ発給制限などといったこれまでの制裁措置よりも遥かに強力なものとなる。中国も当然、何らかの報復策を打ち出してくることになる。例えば中国側がレアアースの輸出制限や、米農産物の買い付けの停止といった、アメリカへの影響が大きい報復策の発動に踏み切るのなら、同国はさらに強力な報復策に打って出ざるを得なくなり、報復合戦はエスカレートすることになる。

報復合戦となっても、どこかの段階で両首脳の自制が効けばよい。だが、秋の大統領選での再選の可能性が後退しているトランプ大統領が、支持率回復の目的から中国に対してより強硬な姿勢をとる可能性が高いとも見られるなか、最終的に年初に締結された米中貿易合意の第1弾が破棄される可能性も十分に高い。その際には中国製品に対する新たな関税の賦課や税率引き上げといった、最悪のシナリオにまで発展してしまうことも想定しておくべきだ。

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