「日本式」がベスト?岐路に立つ英鉄道の民営化 コロナ禍で「フランチャイズ制度」見直し論

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そこで、TOC各社は「政府による救済措置を6カ月だけではなく、2倍の12カ月、さらには18カ月まで延ばしてほしい」と訴えている。これは、新型コロナの特効薬なりワクチンなりが開発されない限り、乗客は戻ってこないとの読みが働いているからだ。

政府に対し「当分この施策を継続すべき」との圧力がかかっており、現地紙には「TOCに対する運営費を現在の半分の水準にして、2022年3月末で継続する可能性」を報じる記事まで出てきている。

ロンドンのターミナルの1つ、チャリングクロス駅。新型コロナの影響で鉄道利用者は激減している(筆者撮影)

あるTOC関係者は「もし今の状況で政府が支援を打ち切るのであれば、低収入へのリスクに直面するほとんどのTOCは『フランチャイズの返納』を求めることになるだろう」と厳しいコメントを述べている。

そんな中、イギリスの鉄道アナリストの間では、「このままフランチャイズ制度がひっそりと消えていくだろう」という論評が盛り上がっている。といっても、国が多額の補助金を投入して運行維持に腐心しているからといって、イコール「再国有化」の道を開くものではない。

「コンセッション方式」が理想的?

今回の新型コロナによる特別措置は、すべてのフランチャイズを現状のTOCによって運行維持させながら、以前からある「コンセッション方式」に近い形で暫定的に運営させる格好を取っている。アナリストらの間では「これを将来において恒久的に続けるのが妥当」という意見が強くなっている。

「コンセッション方式」とは主に、自治体が管理する交通事業体での列車運行で見られる仕組みで、運行を民間のTOCに委託し、TOCは自治体から一定の契約金を得て運営を行うというものだ。この方式では、乗客数の多寡はTOCの収益に反映されず、旅客減少による減収減益などのリスクは自治体が負う形となる。なお、契約によっては実績に応じて加算されるボーナス的な報酬や、怠業によるペナルティが課されることがある。

新型コロナ対策での列車運行においては、実質的にこのコンセッション方式に近い形が導入されている。近い将来の旅客需要復活が見込めない中、従来のフランチャイズ制度とは異なるアプローチを検討する必要性が高まっていると言える。

つまり、当分の間(あるいは、これから後の「ずっと」かもしれないが)、上述の「自治体」の役割を運輸省自らが担い、TOCに収入変動のリスクを負わせない形で、一定の契約金を支払う契約を結んで運行を維持するのが望ましいということだ。

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