「集団免疫」でのコロナ終息があまりに無謀な訳 ニューヨークや武漢でさえ感染率は低い

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麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)はかつて子どもによく見られたが、アメリカでは現在、極めて珍しい病気となっている。ワクチンが十分な集団免疫をつくるのに役立ち、感染が抑えられてきたからだ。しかし新型コロナにはワクチンがない。つまり効果的な新しい治療法がない中で集団免疫を達成するには、さらに感染を広げ、もっと多くの死者を出すほかないのかもしれない。

住民の60%の感染で集団免疫が達成されると仮定した場合、ニューヨーク市はまだ3分の1の道のりしか経ていないことになる。しかも同市では、これまでに住民10万人あたり250人近くが死亡している。新型コロナに感染し、蔓延させるリスクの高い住民は何百万人とおり、死亡リスクを抱えた住民も何万人といる。

ニューヨーク市では5月2日までに住民の20%が新型コロナに感染し、1万8000人以上が死亡した。抗体検査によると、同市の感染死亡率はおよそ1%とみられる。

インフルエンザでさえ集団免疫ない

一方、インフルエンザの感染死亡率は0.1〜0.2%と推計されている。ただインフルエンザに関する政府の評価手法は血清検査ほど正確でないため、感染者数が過少にカウントされ、死亡率が高めとなる傾向がある。

しかし、仮に死亡率が同じだったとしても、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりはるかに危険だ。感染し、死亡するリスクを抱えている人の数が多いからである。

インフルエンザに関していえば、流行期に感染するリスクのある人は人口の半分ほどでしかない。過去に似た型のインフルエンザにかかったことがあるか、その年の流行に合った予防接種を受けたか、いずれかの理由で多くの人がすでに免疫を持っているためだ。

ところが、この数字でさえ集団免疫のレベルには完全には到達しておらず、インフルエンザは今も毎年、流行し続けている。

しかも新型コロナは、まったく新しい病という点がインフルエンザと異なる。新型コロナの免疫を持っている人は今年になるまで、誰一人として世界に存在しなかった。これはつまり、死亡率が同程度であったとしても、はるかに多くの死者が出る可能性があることを意味している。死亡率が同じ1%でも、免疫のない人が多ければ、それだけ死者の数は大きくなる。

カリフォルニア大学アーバイン校で公衆衛生学の准教授を務めるアンドリュー・ノイマー氏は言う。「インフルエンザにかかりやすいアメリカ人は3億2800万人もいない。でも新型コロナが蔓延し始めたときには、3億2800万人のアメリカ人の誰もが感染しやすい状態にあった」。

(執筆:Nadja Popovich記者、Margot Sanger-Katz記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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