京急の駅名変更、「葉山」追加はイメチェン狙い? 認知度アップで誘客強化、「密」回避の課題も

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2019年度は終盤に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で土休日の販売休止を余儀なくされたにもかかわらず、みさきまぐろきっぷは19万2043枚、よこすか満喫きっぷは2万9044枚を売り上げた。3兄妹で合計30万枚を突破しており、売り上げは10億円の大台に乗せたとみられる。

逗子や葉山周辺の道路は混雑するため、公共交通の利用促進は渋滞緩和につながる。駅近くの交差点名には「新逗子」の駅名が残っていた(記者撮影)

逗子や葉山の観光には課題もある。鎌倉と同様、道路が狭く、信号待ちや行き違いで車が列をなすことが多い。逗子海岸の南端の渚橋交差点から葉山御用邸前までの海岸沿いを走る県道207号森戸海岸線では、特に休日は観光客のマイカーによる渋滞が目立ち、生活の足である路線バスの遅延が起こりやすい。

その点、観光客に公共交通機関である京急の電車やバスを利用することになれば、道路の渋滞緩和につながる。とはいえ、人気スポットに人が集中して、上品で落ち着いた雰囲気が失われたり、地元住民の日常に支障が生じたりするようでは、地域活性化の本旨から離れてしまうことになる。京急も葉山女子旅きっぷのリニューアルの際に対象エリアを広げることで混雑の分散を図っている。

誘客と「密」回避のバランス

緊急事態宣言が解除されて観光客の回復が本格化するにつれ、混雑の問題が顕在化してくることが予想される。一方で地元には自粛期間中に厳しい経営環境に耐えてきた店舗が客足の回復を待ち望んでいる現実がある。京急にとっても、コロナ後の誘客の再開にあたっては、「密」の回避とのバランスを見極めながらの難しい判断が必要になる。

「逗子・葉山」の行き先表示。葉山へのアクセスとして認知度向上を狙うとともに、地元と連携を強めたい思惑も感じられる(記者撮影)

営業企画課の尾形さんは、企画乗車券について「加盟店舗とは営業状況やお客さまと街の様子などを共有しており、今後は発売再開に向けてコミュニケーションをとっていく」と説明。そのうえで「タイムシフト・オフピークの利用促進の検討など、『3密』にならないような対策を講じていきたい」と強調する。

開業以来何度も名前を変えてきた歴史がある逗子・葉山駅だが、駅名変更は慣れ親しんだ利用者のさまざまな感情に十分配慮しなければならない問題でもある。それでもこの春、京急が「葉山」を駅名に加えた背景には、課題の解決を含め、これまで以上に地元と連携を強めていきたい同社の思惑があるようだ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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