DV加害者にされた男性は名誉をどう回復したか 反論できない「支援措置制度」悪用の恐ろしさ

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佐久間さん自身、大変だったという。

「娘に会えなくなったことに加え、DV加害者という社会的なレッテルを貼られて苦しみました。昇任や昇給といった人事査定にも影響しましたし、ネット上でも相当たたかれました。とくに高裁の判決が出た後は、DV加害者と決めつけられ、いわれのない中傷が数々なされました」

彼は下血し入院を余儀なくされた。また子どもに会えないつらさも相まって、急に涙が出てきたり、仕事での集中力を欠き思うように仕事ができず、退職も考えていたそうだ。

和解の意味

2019年3月、半田市との裁判が、名古屋地裁岡崎支部で始まった。

裁判では、半田市がさまざまな事情を知っていながら支援措置を受け付けたことが重視された。それは、面会交流審判の存在であったり、広子さんの半田市への相談内容だったり、佐久間さんがもともと知っている半田市内の住所をブロックしても暴力被害防止とはならなかったり、といったことだ。それは、警察の支援相当の意見を受けて、受理したという事情はあるにせよだ。

広子さんが暴力被害を防止する目的ではなく支援措置を申請している――そのことを半田市は知りながら受理し、住民票等を利幸さんに対してブロックした。

裁判所は、半田市に落ち度があることを指摘し、佐久間さんとともに和解勧告がなされ、両者はそれに従った。2020年3月19日のことだ。

「裁判だと判決が出るまでに時間を要しますので、和解勧告に応じました。金銭目的の裁判ではないので、金銭請求は放棄する一方、謝罪と被害内容を明確化することを求めました」(梅村弁護士)

和解条項は以下のとおりである。

1 被告は,原告に対し,原告を加害者とする住民基本台帳事務における支援措置申出につき,住民基本台帳事務処理要領に照らして不適正な取扱いを行ったことを認め,これを陳謝する。

2 被告は,支援措置の要件を満たさなかった状況において,原告について前項の支援措置における加害者であるかのような誤った印象や憶測が発生・継続したこと,原告が●●市において未成年者の法定代理人ないし直系尊属として未成年者の情報に接することが困難になったこと等を重く受け止め,今後の支援措置の実施に当たってはその適正性等につき更なる確認に努めることを確約する。(以下略)

この条項のキモは「2」である。

・佐久間さんをDV加害者だと見なし支援措置を受け付け、その措置をずっと撤回しなかったこと
・実の親が、離婚前も離婚後も、未成年である子どもに会うことはもちろん、居住地や学校などの情報にすら触れることができなくなったこと

誤った支援措置は、「名誉」と「親が子の情報に接する権利」という2つの重大な権利侵害を発生させる。

これを半田市が認めて謝罪したことにより、佐久間さんはDV加害者というレッテルを剥がし、ようやく名誉回復が図られるとともに「静香ちゃんの親」としての立場を取り戻したと言えるだろう。

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