DV加害者にされた男性は名誉をどう回復したか 反論できない「支援措置制度」悪用の恐ろしさ

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「支援措置制度によって助かるDV被害者もいるでしょう。しかし、DV被害防止目的でなく、行政を味方につけることによって子の情報を相手に遮断し、『離婚に当たって親権を確実に得る』ために制度を悪用することもできるのです。

今回の和解で、私たちは、佐久間さんの名誉回復だけでなく、『証拠不要の支援措置を悪用した親子断絶被害の存在』を行政が認めることを、賠償金なしの和解に応じる絶対条件としました。

同じような被害を受けている人は、表面化していないだけで、全国には多数存在するはずです。この和解をきっかけに『DV被害者保護の名の下、制度悪用者が現れる危険性』『加害者扱いされた被害者の存在』『DV冤罪で生き別れになった親子の存在』に、行政だけでなく世間も目を向けてほしいと思っています」(梅村弁護士)

「私は、支援措置によって『DV加害者』『性的虐待者』扱いされ、名誉だけでなく学校等を含むすべての行政機関から『親であること』まで否定され、静香との面会を実質ゼロとされました。こんな私が親としての尊厳を取り戻し、再び子どもと会えるようになるためには戦うしかない思い、自分を鼓舞してきました。また、これは誰にでも起こりうる問題。被害者をこれ以上出したくないという気持ちもありました」(佐久間さん)

親子の再会はいつ

なお、この和解は覆すことはできない。半田市役所が認め、謝罪したからだ。

和解した半田市にコメントを求めた。すると、担当者は次のように発言した。

「(元妻と娘が)半田市から転居し支援措置が終了していたにもかかわらず、手続きを怠ってしまいました。その点について謝罪いたします」

和解条項では、支援措置を受け付けたこと自体を謝罪していたにもかかわらず、その点についての謝罪は口にしなかった。

また、広子さんの代理人である可児康則弁護士にも結果についてのコメントを求めたが、コメントは得られなかった。

最後に、佐久間さんに娘の静香ちゃんとのその後について、伺った。

「もう4年あまり、消息すらわかりません。だけど、子どもが使っていた部屋はいつ帰ってきても使えるよう、今もそのままにしています」(佐久間さん)

親子の絆はそう簡単に切れるものではない。私は親子の再会を信じている。

西牟田 靖 ノンフィクション作家・フリーライター

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にしむた やすし / Yasushi Nishimuta

1970年大阪府生まれ。神戸学院大学法学部卒。旅行やサブカルをテーマにしたライターとして活動した後、アフガニスタンや旧ユーゴスラビアといった紛争地帯を取材したり、日本と旧日本領、日本の国境地帯を巡ったりというスケールの大きな行動力を武器に執筆活動を続けている。近年は家族をテーマにしたライターとしても活動中。著書に『僕の見た「大日本帝国」』(新潮ドキュメント賞候補作)『誰も国境を知らない』『〈日本國〉から来た日本人』『本で床は抜けるのか』など。18人の父親に話を聞いた『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)を2017年出版。数年前に離婚を経験、わが子と離れて暮らす当事者でもある。

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