「コロナウイルスごっこ」が問われる数多くの罪 アメリカやロシアではドッキリ動画の投稿も
――海外の動画のように、「コロナウイルス」と書かれた液体を電車内に持ち込んでばらまいたり、新型肺炎に罹患(りかん)していると装って公共の場で騒ぎを起こしたりする行為は法的にどのような問題があるでしょうか
日本の車内で動画のような行為をすれば、乗客にパニックが発生することは想像にかたくありません。パニックになると列車の運行を止めることにつながり、実際に運行が止まれば鉄道会社に対する威力業務妨害罪が成立します。
このような行為は死傷者を出すことにもつながりかねません。パニックになった乗客がわれ先にと車外へ避難しようとして将棋倒しになったり、線路に降りた乗客らがほかの列車と接触したり、転倒したり、線路外へ転落したりするなどして、死傷者が出れば傷害罪・傷害致死罪に問われます。
また、不必要に防護服を着用して町中を出歩くほか、「コロナウイルス」と書いた液体を持ち歩くだけでも、軽犯罪法に問われる可能性があります。
日本がサリン事件を経験したという特殊事情
――電車内で「コロナウイルス」だといって液体をばらまく行為は、過去の地下鉄サリン事件を彷彿とさせます
海外の動画のように新型コロナウイルスをドッキリの「ネタ」として扱うことは極めて危険です。日本は過去に地下鉄サリン事件を経験しており、そのような特殊事情・背景から、海外で同じ行為をするのに比して、反社会性、反倫理性がとくに強いと考えられるからです。
1995年3月に発生した地下鉄サリン事件は、鉄道の車内で致死性の化学物質サリンを含む液体がまかれた事件で、多数の犠牲者を出し、今でも後遺症に苦しんでいる人たちがいらっしゃいます。
密室となる列車内で「病原体が入っている」と言って液体をまいたり、感染者として病原体をまき散らすフリをしたりするといった行為は、遭遇した乗客にとって死を感じさせるほどの強い恐怖を与えるもので、この事件の再現に当たりかねず、悪ふざけでは済まされないことは明らかでしょう。