引退秒読み、新幹線700系「カモノハシ」の20年 東海道新幹線の「第2の開業」支えた立役者

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700系はその後の新幹線車両のひな型となったと言っても過言ではない。後継の「N700系」はもちろんのこと、台湾で活躍する初の輸出用新幹線車両「700T」や、“ドクターイエロー”と呼ばれる新幹線電気軌道総合試験車「923形」も700系がベースだ。

700系(左)と並んだドクターイエロー=2017年7月(記者撮影)

最新鋭の「N700S」にも700系の開発で得た知見が採り入れられている。アルミ合金で車体の静粛性に優れた「ダブルスキン構造」や床下機器の配置、主回路を構成する4両1ユニットの構成、シングルアームのパンタグラフとその周辺のカバーの形状など、基本的な部分を継承しつつさらに発展させたのがN700Sだ。乗り心地を一段と向上させるため、N700Sではより性能の高い「フルアクティブ制振制御システム」を搭載する。

東海道新幹線は1964年10月の東京五輪開催直前に開業し、初代の車両である0系が営業運転を開始した。登場時、速達型列車「ひかり」の本数は1時間に1本、最高速度は時速210kmで東京―新大阪間を4時間かけて結んでいた。翌年以降、しばらく3時間10分での運用が続いた。

700系は「第2の開業」の立役者

国鉄民営化後の「のぞみ」の登場で、東京―新大阪間は2時間30分で結ばれるようになった。そして、東海道新幹線はJR東海が「第2の開業」と位置づける時代を迎える。2003年10月、“品川新駅”が開業。これに合わせて現在のように「のぞみ中心」のダイヤに移行した。700系の増備によって、最高速度が時速270kmの車両への統一が進み、高速ダイヤへの道が開かれた。

当時、同社がアイドルグループTOKIOをCMソングに起用し、大々的に展開したキャンペーンでも700系は中心的役割を果たした。車体側面に「AMBITIOUS JAPAN(アンビシャス ジャパン)!」の文字を大きく描いたのは新幹線車両としては珍しい取り組みだ。

700系車両に施された特別装飾(記者撮影)

東海道新幹線では、新型車両の導入だけでなく、地上装置の改良、清掃時間の短縮といったさまざまな施策を講じることによって、所要時間が分刻みで切り詰められてきた。後進のN700系が主流になってくると、700系に曲線を高速で通過するための「車体傾斜システム」がないことや加速性能の違いが、一層の輸送力強化のネックになってきていた。

今年3月、700系が去った直後のダイヤ改正で、1時間に最大12本ののぞみを走らせる「のぞみ12本ダイヤ」が実現する。そして2度目の東京五輪開催を控える7月に次世代を担うN700Sが営業運転にデビューする予定だ。のぞみを東海道新幹線の主役の座に押し上げた700系が卒業することによって、次のステージの幕が上がることになる。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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