公開「痴漢発生駅ランキング」、意外な1位は? ヤフー出身者が立ち上げた防止対策アプリ

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鉄道会社からもアプリを使った痴漢防止対策が登場した。JR東日本は2月4日、スマホの専用アプリを使って痴漢被害を車掌に通報するシステムを開発し、第1ステップ(2月下旬から3月中旬)、第2ステップ(6月以降)の2回に分けて埼京線の車内で実証実験を行うと発表した。

通報を受けた車掌は、車内放送で乗客に注意喚起を図る。第1ステップでは、試験である旨を伝えた上で車内放送を行う。その内容は、1)「痴漢を見つけた方はお知らせください」という趣旨のマナー放送、2)「車内のお客様より迷惑行為の連絡がありました」という趣旨の迷惑行為を伝える放送、3)「○号車のお客様より、痴漢の通報がありました」という趣旨の痴漢通報があったことを伝える放送の3種類。アンケート調査を行いながら、放送内容の選定を行う。

第2ステップでは、放送内容を1パターンにした上で、最寄り駅の駅員と連携するなど、実証実験の内容はより具体的なものとなる。車内の乗客に痴漢行為に気づいてもらうことで、痴漢行為の抑制を図る狙いだ。

この実証実験がうまくいけば、ほかの鉄道会社も追随する可能性がある。ただ、利用者が自分が利用する鉄道会社ごとにアプリを入れるのは不便だし、ビッグデータとして活用するという観点からもアプリは共通化するほうが効率的に思われる。

乗客の側にもできることがある

「痴漢は被害者と加害者だけに矮小化していい問題ではない」と片山さんは言う。電車内で痴漢が起きても車掌や駅員がすぐに駆け付けることはできないのだから、電車内にいる乗客に痴漢問題に対する意識を高めてほしいというのが禹さんたちの願いだ。

そこで、痴漢レーダーには「痴漢にあった」だけでなく、「痴漢を見た」人が登録する機能も付いている。痴漢を見たという登録は全体の3割程度あるという。さらに、盗撮に関しては被害者本人ではなく第三者からの報告の方が多いという。

痴漢に遭ったときやつきまといに遭ったとき、周りに助けを求めたくてもできない人のために、痴漢レーダーには「偽電話」という機能がある。

痴漢やつきまといに遭ったときにポチッと押すと、実際に電話がかかってきたような着信音やバイブレーションが作動するだけではなく、さらには人の声まで聞こえてくるので、痴漢をひるませることができるのだ。「夜道を歩いている女性が、危険回避のために“お母さん、牛乳買って帰ろうか”といった偽電話をすることがある。これがヒントになった」(片山さん)。

痴漢レーダーには「見守り機能」もある。近くに痴漢被害が発生していることを知らせる機能だ。「この通知が届いたら、ぜひ周囲を見渡してもらいたい」と片山さんは言う。受信者は被害者である確率が高い。「困っていることがありますか」という程度で構わないので声がけすれば、被害者が痴漢被害から逃げられるチャンスが出てくるかもしれない。

痴漢対策を鉄道会社や警察任せにせず、乗客の側でもできることがある。このアプリはそのきっかけになるはずだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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