何もかも足りない「武漢」肺炎との凄惨な闘い

多くの人は検査を受けられず自宅で自主隔離

しかし、40度の発熱があり、意識を失ったり取り戻したりしていた父親も、同様の症状が出始めていた母親も、検査を受けることができなかった。病院にはそのスペースがないこと、さらに彼の両親の症状がそれほど深刻ではないと伝えられたのだ。彼の両親は自宅に送り返され、そこで隔離されることとなった。

トンにはなすすべがなかった。彼は100キロ近く離れた黄石市におり、この都市もまた、数日前に湖北省のほかの多くの都市とともに政府によって封鎖されていた。黄石から武漢への道路はすべて封鎖されていた。トンは何日も身動きが取れなかった。

コロナウイルスの検査では「陰性」だったが

市当局との何時間にもわたる交渉の末、2月1日になってようやく、彼は両親の横たわるベッドにたどり着くことができたという。両親はコロナウイルスの検査を受けており、父親は病院への入院が許可されている。このプロセスには10日かかった。「私が望むのは、両親の世話をすることだけだ。自分が感染しても構わない」とトンは話す。

ガン・ハンジャンはじめ、一部の人にとっては、新しい病院の建設が十分な速さとはいえない。先月、彼の父親は激しい発熱と咳で倒れた。父親はコロナウイルスの検査を受けたが、結果は陰性だった。しかし、症状の発症から10日後、父親は死亡したとガンは話す。

病院は死因を「重度の肺炎」としたが、ガンはそれがコロナウイルスであったと信じている。最近になって、複数の専門家が、ウイルスの正確な診断には数回の検査が必要になる可能性があることを認めている。

彼の父親が亡くなった日、ガンは自らも同じ症状が出始めたことを話した。しかし、車がなく、指定された病院の1つに行ってコロナウイルスの検査を受けることができていない。

「治療を受けるのはとても難しい。病院への入院は認められない。そして、十分な薬もない」と、彼はウイルス性肺炎の治療を受けている、自宅近くの小さな病院から電話でゆっくりとささやいた。

(執筆:Amy Qin記者)

(C)2020 The New York Times News Services 

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