通学客の不満解消、「観光列車」驚きの大変身 ロングシート化で自転車搭載を可能に

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課題は、サイクルトレインとしての魅力拡大だ。自転車を搭載できるようになったとはいえ、JR東日本の「B.B.BASE」のような自転車を固定する設備はなく、利用者は乗車中自ら自転車を支えていなくてはならない。

無料とはいえ、前日までに予約が必要で雨天時は中止というのも利用のハードルをかなり高めている。クロスバイクのようなスポーツサイクルを、気軽にレンタルできる施設も必要だ。

現在くま川鉄道が実施しているレンタサイクルはシティサイクル、いわゆる「ママチャリ」であり、人吉市観光案内所の「楽チャリ」は電動アシスト付き自転車で、いずれもサイクルトレインには対応していない。人吉を訪れた観光客が、その場で思い立ってスポーツサイクルを借り、サイクルトレインと球磨川サイクリングを楽しめるような環境を作らなければ、せっかくのサイクルトレインも宝の持ち腐れとなってしまう。

通学・観光の両面でチャンス

正直に言えば、くま川鉄道は球磨川と田園の車窓風景が美しいとはいえ、肥薩線に比べるとやや地味な路線だ。一方で、サイクルトレインは地域でオンリーワンのコンテンツとなる可能性を秘めている。朝夕は高校生たちが安心して通学し、日中と週末はサイクリストと観光客が気軽に本格的なサイクリングを楽しむ。週末の観光列車では、広いスペースを生かして地元の人が観光客をもてなし、夜の列車は人吉で一杯飲んだ人がゆったりと家路につく……。

クロスシートをロングシートに変えただけながら、サイクルトレイン導入はくま川鉄道にとって通学輸送・観光振興の両面で大きなチャンスといえるだろう。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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