欧州高速鉄道の「覇者の座」狙うイタリアの野望 フランス、英国の次はスペインに参入表明
ルカ・ディ・モンテゼモロ氏はイタリアで最も成功を収めた実業家の一人で、中でもかの有名なフェラーリの会長を務めたことが、その名を世界に広めた。こうした話にマスコミは弱く、早とちりをしたメディアは「フェラーリ特急」などと称してイタロの運行開始を報道、さもフェラーリが鉄道を運行しているかのような内容が紙面をにぎわした。
実際にはフェラーリとの資本関係はまったくないものの、世間にはフェラーリの特急列車という強烈なイメージが植え付けられた。ブランドイメージとしては、十分すぎるほどのインパクトがあったといえるだろう。
イタリアvsフランスの「代理戦争」
だが、イタリア鉄道にとって面白くなかったのは話題性ではなかった。イタロを運行するNTV社の株主の中にSNCFの名前があったのだ。さらに、イタロに使用されている車両も、フランスTGVのメーカーとして有名なアルストムの最新型車両AGVである。言い換えれば、イタリアとフランスの代理戦争のような状況となったのだ。
イタリア鉄道が次世代の新型高速列車として、地元アンサルドブレダ(現・日立レールS.p.A)が製造するETR400型を選んだことは、決して偶然ではないはずだ。
フランス陣営の侵攻を許したことをイタリアがずっと根に持っていたかどうかはさておき、逆にフランスへ参入するという話はイタロがデビューした2012年頃から存在した。その後進展している様子は見られなかったものの、実際には水面下で着々と準備を進めていたのだった。そしてこのたび、満を持してフランスへ進出することを正式に発表した。
だが、イタリア鉄道が攻勢を緩めることはなかった。侵攻は、ピレネー山脈の向こう側にまで及んだのだ。
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