相鉄「都心直通」で東京の鉄道勢力図は変わるか 悲願がついに実現、沿線の魅力は向上する?

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相鉄・JR直通線の開業により、利便性向上や他地域から沿線への集客に期待が集まる一方、影響が出そうなのは相鉄のターミナルである横浜駅だ。横浜駅は1日の平均乗降客が約42万9000人を数える相鉄最大の駅である。

同駅には商業施設として相鉄ジョイナス・横浜髙島屋があるが、直通線の開業によって横浜駅で乗り換える人が減れば、これらの商業施設にも影響が出ることが予想される。一方で、現状では直通線の本数は少なく、横浜駅を経由するほうが便利なケースも多い。

これらの点を考慮すると、直通線と横浜経由の両ルートを利用できる定期券があってもよさそうだ。例えば、西武鉄道は新宿線で、高田馬場駅乗り換えと西武新宿駅乗り換えの両ルートを選べる「Oneだぶる♪」、池袋線で池袋駅経由と小竹向原駅経由を選べる「だぶるーと」を発売している。

だが、相鉄によると「その予定はない」との返答だった。しかし、横浜駅の相鉄関連の商業施設を今後も盛り上げていくため、そして直通線の利用者に対するフォローとしても、こういった定期券の発売が検討されてもいいのではないだろうか。

沿線の価値を高められるか

2022年度下期には相鉄・東急直通線が開業する予定だ。この際には、朝ラッシュ時には1時間あたり10~14本、そのほかの時間帯には1時間当たり4~6本が運行される。二俣川から目黒駅までの所要時間は現在より16分短い38分となり、1日20万人が利用すると予想されている。また、同線は新横浜駅を経由するため、新幹線利用を含め各地へのアクセスも便利になる。

新宿駅に入線した相鉄車両(撮影:尾形文繁)

直通線の開業によって、沿線の人々が県内をスルーして東京都内に出て行ってしまうのでは意味がない。単に利便性が高まるだけではなく、新しく暮らす人が相鉄沿線に増え「選ばれる沿線」として価値が高まっていくという未来が見えることが大事だ。

多くの人を東京方面から沿線に引き寄せることが、相鉄・JR直通線、そして今後開業する相鉄・東急直通線には求められている。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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