『正社員になるべきか、派遣の身軽さを取るか』(28歳女性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
<城繁幸氏の診断>
『正社員のメリット、デメリット』
正社員から派遣社員への安易な置き換えを進める経営者が多い中で、正社員への登用を勧められるというのは、働き振りがしっかり評価されている証でしょう。羨ましい限りです。
正社員になるメリットは色々あります。まず基本給が正社員基準のものとなり、また派遣会社のマージンも無くなるため、時給換算すれば通常はそれなりにアップするはずです(当然、将来の年金受給額も増えるはずです)。ご指摘のとおり、育児・介護休職なども正社員基準で取得可能となります。
一般に、派遣などの非正規雇用の場合、出産や子育て期間中の補償が弱く(人材派遣健康保険組合に加入されていればほぼ正社員に準拠しますが)、規定があったとしても、実際には派遣先から契約を更新されないなどの不利益をこうむるケースが目に付きます。余談ですが、これは少子化の隠れた要因ですね。実際、私の知り合いにも、派遣先に切られるのが怖くて、なかなか出産に踏み切れないという方は複数います。
そういう意味では、正社員の方がより確実に福利厚生のサポートを受けられるといえるでしょう。
今後のキャリアという意味でも、履歴に“正社員”と残ることは、非常に大きな意味があります。通常、企業が中途で採用する場合、前職に比例した待遇で選考を進めるのが一般的です。マネージャー採用の場合はマネージャー経験者、大卒総合職の場合は大卒総合職という具合です。ここで正社員として一定のキャリアを経験しておくことは、(多少業務負担が増えるとはいえ)将来のキャリア育成を考えた場合、非常に大きな武器になることは間違いありません。
そうはいっても、懸念材料はあります。上記のようなメリットがあるにも関わらず、現実には続々正社員が逃げているわけですから、はっきりいって相当内部に問題があると思われます。実は、一部の企業では、「正社員より派遣社員の方が待遇が良い」という逆転現象が見られます。しっかりした派遣会社が間に入っていれば、賃金計算や福利厚生でインチキはできませんが、自社の正社員の場合、ある意味やりたい放題ですから。たとえば、基本給のみ支給で月100時間サービス残業なんてやらせれば、時給換算で500円くらいになってしまうわけです。