日産の大幅減益、出口が見えぬ「アメリカ再建」 一部に改善効果も、欠かせぬ新車投入

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業績を抜本的に回復させるには、新型車の投入が欠かせない。

日産は2010年代に入ってから新興国での生産拡大投資にのめり込み、新型車の開発に回す資金を絞った時期があった。その結果、車齢の高齢化につながり、大幅な値引きをしないと売れないというツケが回ってきている。

魅力的な新型車が出てくれば、値引きを抑えて正価に近い価格で販売でき、収益性の改善につながる。日産は2023年3月期までに20車種以上の新型車を投入、現在5年を超えている平均車齢を3.5年以下にする計画だ。そして、新型車の電動化を進めるとともに、先進運転支援システムなど先進技術を搭載して商品力を上げ、アメリカでの販売を140万台(2020年3月期見通し131万台)まで回復させる青写真を描く。

北米市場でSUVを相次ぎ投入

新型車の投入はすでに始まっている。昨秋のアルティマに続き、今年8月には小型セダン「ヴァーサ」を刷新。今冬には「セントラ」(日本名「シルフィ」)のフルモデルチェンジも控える。とくにアルティマとセントラはアメリカだけで年間各20万台以上を売り上げる量販車種だ。

とはいえ、アメリカ市場での売れ筋はセダンからライトトラックと呼ばれる大型車にシフトしている。日産は、2020年前半に北米での最量販車種であるSUV「ローグ」(日本名「エクストレイル」)をフルモデルチェンジするのを皮切りに、ほかのSUVやピックアップトラックも刷新していく。マー氏は「新車を今後投入していけば、インセンティブが下がるトレンドは続くだろう」と自信を示す。

9月に辞任した西川廣人前社長は在任中、「今期が底。2~3年で元の日産に戻す」と繰り返し発言していた。ただ、新車を投入するだけで簡単に解決する問題ではない。

長年の値引き販売によって、日産車はアメリカの多くの消費者にとって、値引きしないと売れない車になってしまった。日産がインセンティブを意図的に抑える戦略を採用している影響で、アルティマは刷新してから間もないにもかかわらず、ライバル車であるトヨタ自動車の「カムリ」、ホンダの「アコード」の販売台数を下回っている。ブランドの傷を癒やすのには相当の時間がかかる。

急速な新車投入にはリスクも伴う。複数車種の新車生産を同時に立ち上げた結果、部品メーカーなどで生産が混乱して品質問題に発展することは過去に各社でもたびたび発生した。加えて、一気に新型に切り替われば、モデルが古くなる時期が重なり、再び販売の低迷を招く懸念もある。

内田誠・新社長が率いる新しい経営体制は、当初の2020年1月予定から前倒しして12月1日にスタートする。53歳と自動車業界では比較的若い新社長ではあるが、助走期間の余裕はない。アメリカだけでなく、新興国での生産能力の縮小や人員削減など課題は山積している。一刻も早く再建への道筋をつけなければ、日産は激動の自動車業界で取り残されるばかりだ。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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