日産の大幅減益、出口が見えぬ「アメリカ再建」 一部に改善効果も、欠かせぬ新車投入

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それだけに日産は現在、最優先課題として北米事業の立て直しに取り組んでいる。個人向け販売でのインセンティブの抑制と、レンタカーなど収益性が低いフリート(法人)販売を減らすことが柱だ。

「アメリカの回復は順調に進んでいる」と語る日産の次期CFO、スティーブン・マー氏(記者撮影)

マー氏によると、1台当たりインセンティブの金額は前期を下回る水準で推移し、新車の平均売価も上昇しているという。

車が売れなくて膨れていた販売会社の在庫も、減産によって第2四半期(7~9月)には第1四半期(4~6月)と比べて9%減と圧縮が進んでいる。

財務面でもそうした努力がわずかながら表れ始めている。北米事業の第2四半期は、インセンティブなど販売費用の削減効果が販売台数の減少影響を上回った。第1四半期までは値引き費用を減らした以上に販売台数が落ち込み、利益を大きく目減りさせていただけに、「改善している」というマー氏の言葉は事実だろう。

値引き金額は高止まりのデータも

ただ、日産が強調するほどに状況は好転していないようだ。アメリカの調査会社オートデータによると、日産のインセンティブは高止まりしており、値引き戦略からの転換に四苦八苦している様子がみてとれる。

今年8月の日産の1台当たりインセンティブは平均4667ドルで、これはトヨタより66%多く、ホンダの2倍の水準だ。今年4月にはピーク時(2018年11月)と比べて1000ドル近く下落したが、8月には再び元の水準に戻った。

昨秋にフルモデルチェンジした主力セダン「アルティマ」は前年同期と比べると金額が大きく低下しているが、車齢(車の発売からの年数)が高いSUV(スポーツ用多目的車)などがインセンティブの水準を押し上げているようだ。

調査会社のデータと日産の説明に食い違いがある点を記者に問われると、マー氏は「われわれが示したインセンティブは財務実績に対応した数字。もしかしたらわれわれが知らない調査機関のデータがあるのかもしれない」と回答。説得力のある説明はなかった。

第2四半期のみでの地域別の営業損益を見ると、北米は358億円の黒字で前年同期とほぼ同水準。数字だけを見ると健闘しているように見える。一方で、日本は前年同期から830億円も悪化して267億円の営業赤字に転落した。日本セグメントには、円高や日本から北米への輸出低迷の影響、北米での不具合対応費用の一部も含まれており、北米の収益は見かけより悪いのが実態だ。

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