「ペット飼う高齢者」が直面する厄介すぎる問題 家が「ゴミ屋敷」「死体だらけ」になる危険も

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世間の相場はわからないが、二村さんが頼んでいた動物病院では、オスもメスも不妊手術の費用は2万円。十数年かけて30〜40匹の猫の不妊手術を行ってきたという。そのおかげで地域に野良猫の姿はほとんど見かけなくなった。

しかし、別の問題が浮上した。TNR活動で元の活動場所に戻した猫が相次いで姿を消すという事態が起こったのだ。猫には縄張りがあり、手術後、すぐに姿を消すことはない。

「どうしたんだろうと思って、近所の人に聞いたら、同じ地域に住んでいる男性が猫を捕まえて川に放り投げて殺しているというんです。その人は猫が嫌いなんだろうけど、そんなひどいことがよくできると思って。その人から何か文句を言われたら言い返してやろうと思っていたんだけど、結局、私には何も言ってこなかった。

でも、そんなことがあって不妊手術した猫を元の場所に戻すことができなくなって、仕方なくうちで引き取ることにしたの。そんなわけで、一時期、うちには13匹ぐらいの猫がいたこともあるんですよ。

もともと猫が好きだったから、私の部屋の奥に2畳くらいの猫専用の部屋を作ったんです。そこに大きめのトイレを2つ置いて、ご飯もそこで食べさせるようにしています。13匹もいたときなんて、もう、猫の世話で1日が終わる感じでした。臭いもするので、猫部屋には脱臭機も置いています。今は6匹まで減りました。猫をいじめていた男性もどこかに引っ越していったので、ホッとしています」

13匹もの猫の世話をどうしたのか?

そんな二村さんがひざの手術をすることになったのは、今から10年ほど前のこと。20日ほどの入院が必要と言われ、二村さんは頭を抱えてしまった。娘さんと同居しているが、日中、仕事に出かけるため、13匹もの猫の世話はできない。

「娘も猫は嫌いじゃないけど、私があまりに猫の世話をしすぎたせいか、ちょっとあきれているというか、猫に関しては距離を置いているところがあります。普段、猫の世話をしているのは私で、娘はほとんど関わっていません。それで、娘には負担をかけられないと思って、近所の知り合いに謝礼4万円を渡して世話をしてもらうことにしたんです。

知り合いには毎日、家に来てもらい、トイレを掃除してもらったり、ご飯をあげてもらったり。娘が仕事から帰ってくるまで家にいてもらったこともありました。それで、何とか入院中は乗り切ったという感じですね」

私が「また入院しなくてはいけなくなったら、どうするんですか?」と聞くと、「同じ知り合いに謝礼を払って世話をお願いしようと思います。娘も1人で猫の世話をするのは大変ですが、2人なら負担も少ないでしょうから」という。

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