日本人は「はしか流行」の怖さをわかってない 予防接種1回のみだと免疫には不安が残る
近年になって大企業もウェートを置くようになったが、現在、国内でMRワクチンを販売するのは、第一三共(北里研究所のワクチン部門を吸収)、武田薬品工業、阪大微生物研究会(BIKEN財団)だ。十分な生産能力があるとは言えず、毎年の生産量は厚労省が各社に指示して割り当てている。
厚労省のホームページには、2015年3月に世界保健機関(WHO)が日本を麻疹の「排除状態」と認定されたことが記されている。西太平洋地域ではオーストラリア、マカオ、モンゴル、韓国に次いで5カ国目だ。
ただ、これは国内に由来する麻疹ウイルスの感染が3年間確認されなかったためで、海外から持ち込まれる麻疹は、毎年のように流行を繰り返している。
海外の状況は
グローバル化が進む昨今、世界中で麻疹の持ち込みが問題となっている。海外から持ち込まれ、ワクチンを接種していない人が感染するからだ。アーミッシュの集落やワクチン忌避者での流行が報告されている。
今年4月、アメリカでの麻疹患者は695人に達した。2000年の撲滅宣言以降、最多だ。欧州では、今年1月と2月だけで3万4300人が感染し、WHOはアルバニア、チェコ、ギリシャ、イギリスの「排除状態」を取り消した。
このような国では麻疹対策に躍起だ。今年4月、ニューヨーク市は、ユダヤ教正統派の子どもで麻疹が流行していることを受け、公衆衛生の非常事態を宣言。特定の地域に住み、感染リスクがある人にワクチン接種を義務化した。従わない場合は罰金を課す。
企業も協力する。今年4月、クラウドファンディングのIndiegogoは、反ワクチン募金などを目的としてプラットフォームの利用を禁止した。
Facebookはワクチン反対グループによる広告や発言を排除し、Instagramも、ワクチンに関する不正確な情報の発信をハッシュタグと検索から排除した。YouTubeも反ワクチンコンテンツが広告収入を得られないように体制を整備している。わが国とはあまりにも違う。
ほかのワクチンも状況は変わらない。生産力には限界があり、大流行が起こると、すぐに供給不足に陥る。
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