アメリカの若者に広がる家選びの「こんまり流」 高騰続く住宅価格は日本流の狭小で解決

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すでにアメリカにはスマートホーム関連の端末やサービスを手がける企業が多数存在するが、「すべてを統合したうえで、サービスと連携できるソフトウェアを開発中」(本間氏)。例えばクリーニングやペットの散歩をアプリから発注すると、家に不在でも有効期限付きのスマートロックを発注先にメールで知らせ、家の中に入ってきて作業する様子を監視カメラで確認できるといった住宅とサービスを連動させる構想を描く。

これらのコンセプトを実現した住宅第1号は、2020年初に完成予定。実際の住み心地や使い勝手を検証しながら、ポートランドのプロジェクトにも反映させていく方針だ。

本間毅(ほんま たけし)/1974年生まれ。中央大学在学中に起業し、1997年にイエルネット設立。2003年にソニー入社、2008年にアメリカ西海岸に赴任し電子書籍事業の事業戦略に従事。2012年に楽天執行役員に就任、退任後の2016年にシリコンバレーでHOMMA設立(撮影:今井康一)

2016年に創業したHOMMAは、2021年の住宅販売開始までは売上高の見通しが立っていない。膨らみ続ける費用を捻出するために2019年6月末時点で14.5億円の資金を調達しているが、引き続き大型の資金調達を続けていくという。提携・出資先企業には、パナソニックやヤマハ米国法人、住宅設備・建材のサンワカンパニーなど日本の住宅関連事業会社がズラリと名を連ねる。

アメリカのベンチャーキャピタル(VC)にも話をしたが、本間氏は「事業の支援の仕方がわからないし、アメリカの住宅が簡単に変わるとは思えないと言われてしまった。アメリカ人は家に対する興味や期待がない。スピード感を重視するなら、話を早く理解してもらえる日本企業がいちばんいい」と語る。

GAFAも住宅事業には手付かず

日本ではシステムキッチンやユニットバスなど住宅のモジュール化が進んでいるが、アメリカでは現場でゼロから組み立てるスタイルが中心だ。さらに住宅市場の9割を中古住宅が占めており代謝が悪い。新築住宅は8割が建売だが、安く建てて高く売るというビジネスモデルが定着している。

Googleは2014年に住宅設備のサーモスタットを開発するベンチャー、ネストを32億ドル(約3800億円)で買収しているが、住宅事業には参入していない。住宅業界はGAFAなどのテクノロジー企業が介在しない、旧態依然とした体制を引きずっている。

本間氏は「シリコンバレーではフェイスブックやテスラ、ウーバーなど、さまざまな創業者に会い、スタートアップが世の中を変えていく様子を生活者として体験してきた。この間にアップルとグーグルがスマートフォンを生み出し、テスラが自動運転を進めたのに、住宅だけが変わっていないことが不思議だった」と創業の経緯を語る。

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