『ボーナス過去最高とは言うけれど』(34歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
<城繁幸氏の診断>
診断:『一時金重視は、経営陣の苦肉の策』
2006年冬のボーナスは、過去最高を更新したとのこと。企業の好業績を反映したものといえるでしょう。
ただ、それだけの豊かさを実感している人はどれだけいるでしょう。実際のところ、バブル期のような“老若男女問わないお祭り気分”とは程遠いのが現状です。
このギャップを生む原因は、まさにあなたの指摘どおり、企業の人件費に対する姿勢の変化にあります。
従来、日本企業は定期昇給やベースアップを通じ、基本給を底上げする形で、従業員に利益を分配して来ました。これは「年を経るごとにお給料が上がる」という年功序列制度と、表裏一体のシステムです。つまり「成長は永遠に続くはずだ」とみんなが信じていた時代の遺物なんですね。
当然、年功序列制度が崩れた今、この基本給底上げ作戦は無理があります。というのも、ここ日本では、一度上げちゃった給料はなかなか下げられないんですね(ここが欧米の職務給との最大の違いです)。
実際、平成不況の底だった2000年頃、日本中の企業がこの問題に頭を抱えていました。
『成長どころか、最終赤字も珍しくない時代…そんな中、バブル期までに上がりに上がった人件費は、経営を圧迫している。人件費は抑えたい。でも既に支払ってる賃金には手をつけられない。ようし、じゃあこれから上がる分を抑えよう』
という具合に、“これからの昇給”がターゲットにされたわけです。
業績が回復しつつある現在でも、経営者の頭からは、この時の苦い記憶が消えることはありません。(労働条件に対する法令が現状のままであるなら)基本給はなるべく上げずに、賞与で上乗せというスタンスは、日本企業の新しいスタンダードとなるでしょう。