6.2%成長の中国、27年ぶり「低成長」のわけ 習主席が警戒する「灰色のサイ」がやってくる

拡大
縮小

また増値税(付加価値税)の引き下げなど、総額2兆元に及ぶ企業負担の軽減も決まった。金融面では、中央銀行である中国人民銀行が国有銀行に対して中小企業向け融資の拡大を指導。3月の人民元建ての新規融資は1兆6900億元と2月から倍増した。

こうした動きを受けて、企業の景況感を示す製造業PMI(国家統計局)は2月の49.2から大きく改善した。3~4月は景気判断の節目となる50を上回ったが、これに冷や水をかけたのが5月10日のトランプ政権による第3弾の制裁関税だ。

アメリカ政府が2000億ドル相当の中国製品への関税を10%から25%に引き上げると発表し、米中貿易摩擦の先行きは一気に不透明さを増した。このため、5月の製造業PMIは49.4に反落。6月も横ばいだった。製造業投資の増加幅は1月から6月までの累計で前年同期比3.0%にとどまり、同時期に9.5%増だった2018年との落差が鮮明になった。

牽引役になるはずだったのはインフラ投資だ。ところが1~6月期のインフラ投資は累計で4.1%増にとどまり、通年で3.8%増だった2018年と比べてペースは加速していない。

シャドーバンキング規制で資金供給に目詰まり

年初にインフラ投資の呼び水として期待されたのが、地方政府特別債(専項債)発行額の増額だった。専項債は元利償還の財源がプロジェクトからの収益に特定されているうえ、地方政府による保証がつかない。その狙いはインフラ投資と地方政府の財政を切り離すことにある。

その発行額を2018年より8000億元多い2.15兆元に増やし、地方政府主導のインフラ投資が大幅に伸びると期待されていた。しかし、それがもくろみどおりに進まず、マクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会が地方での実地調査を進めている。

かつては融資プラットフォーム(地方融資平台)と呼ばれる資金調達会社に地方政府が出資し、国有銀行が融資をつける手法が認められていた。地方融資平台は独自に債券を発行し、開発資金に充ててきた。地方融資平台の負債は事実上、地方政府の「隠れ債務」とみなされている。

これが2013年に「シャドーバンキング(銀行を介さない金融取引)」問題として注目され、中国経済が抱えるリスクとして強く意識された。そのため、現在では地方融資平台への地方政府の出資は禁じられている。

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