コンビニオーナーがここまで苦しんでいる理由 FCとドミナント戦略のあり方が問われている
コンビニと言えば、家族経営が有名だが、その家族運営に深刻な負担がかかっているのが現実だ。実際、セブン-イレブンのオーナー募集サイトを見ると、あくまでも家庭単位での独立&運営をベースにした起業を推奨している。
同サイトの「ビジネスパートナーの内訳」を見てみると、夫婦73.0%、親子16.0%、兄妹姉妹9.4%、従兄弟0.2%、三親等その他1.5%となっており、あくまでも家族経営を前提としたビジネスモデルを構築していることだ。
人手不足になった現代、この家族経営が大きな負担になってしまっているわけだが、問題なのはそれだけではない。フランチャイズチェーンの契約を結んでいるために、勝手に廃業もできないし、大阪のセブン-イレブンオーナーの登場で話題になった24時間営業をやめることもできない。
さらに、セブン-イレブンの強みとも言われてきたロイヤルティーの高さも問題になっている。セブンはほかのローソンやファミリーマートに比べて、ロイヤルティーが高いのだ。
どのコンビニでも、「自分で土地・建物を用意する場合」と「本部が土地を用意する場合」とでは、ロイヤルティーが違ってくるのだが、例えばセブン-イレブンの場合、本部が土地を用意するケースでは、売上総利益(粗利益)が550万円を超えると、ロイヤルティーの比率は76%(418万円以上)となる。粗利益の7割超を本部に取られてしまうビジネスが、これまで維持できていたというほうがすごいことかもしれない。
ファミリーマートやローソンも同条件で69%。コンビニのロイヤルティーが高すぎるという指摘は以前からあった。もっとも、ローソンは粗利益が600万円を超えると21%に引き下げられ、儲かれば儲かるほどオーナーの取り分が大きくなるシステムになっている。
ちなみに、スターバックスは一部特殊なケースでライセンス契約もあるが、基本的には直営店がそのほとんどを占めている。スターバックスといえば、最近になってコーヒーの価格を10~20円値上げしたが、その理由が従業員の確保であり、人手不足への対応が理由になっていた。
かつてスターバックスコーヒージャパンCEO だった岩田松雄氏(現リーダーシップコンサルティング代表)は、「CS(顧客満足度)よりもES(従業員満足度)を重視する。 従業員が会社に満足していないのに、お客様を満足させるのは難しい」と発言している。
実際に、日本の小売業は従業員を軽視してきたところがある。人が余っていた時代には、格安の時給で「深夜のワンオペ」を押し付け、顧客からのクレームや暴力に対して本部や本社は何もしなかった時期があった。
コンビニで従業員が顧客に対して土下座をさせられる動画が、YouTube などに出て問題になったが、人手不足になった現在、そうした店舗オペレーションの不備が表面化してきたと言っていいかもしれない。
本質は人口減少?小売業全体の課題がここにある
いずれにしても、過剰なドミナント戦略という認識を持たれてしまったセブン-イレブンにとって、今後しばらくは新規のフランチャイジー募集といった面で向かい風になるかもしれない。
日本だけではなく、香港など海外でも駅の中に100メートルおきにセブン-イレブンがあるような地域を数多く見た。海外では通用するドミナント戦略も、日本では通用しない時代に入ってきたということだろう。
今回の問題はコンビニ業界や小売業界、飲食業界だけの問題にとどまらないとも言える。
筆者は「お客様は神様です」という言葉に納得がいかない1人だ。顧客は神ではないし、従業員は召使やしもべではない。あくまで商品やサービスに対価を支払うビジネス上の相手でしかない。日本には、サービス業を中心に過剰なサービスを善とする商習慣がある。しかし、そんな時代はもう通用しないのではないかと思っている。
そもそも日本企業の場合、正社員を辞めさせて非正規労働者に切り替えたり、独立させたりすることで、人件費を削減して業績を確保してきた。その結果、貧困問題が深刻化したのだが、今回のコンビニ地獄問題はこれまで見過ごしてきた問題を解決するいい機会と言えるのかもしれない。
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