実は京急電鉄の「兄弟」、養老鉄道の生き残り策 ルーツをさかのぼると両社の創業者は同じ

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近鉄は体制変更時に一時金として経営安定化基金(養老線支援基金)の10億円を拠出したが、今後は養老鉄道の事業を毎年度補助する必要がなくなった。養老鉄道は事業利益が上がった場合は利益相当額を基金に拠出し、逆に収支がマイナスになった場合は基金による支援が行われる取り決めになっている。なお、新法人の運営経費は沿線自治体が負担し、国や県による施設の維持・更新などに関わる補助は新法人に対して行われる。

ちなみに、この新しい事業スキームは「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく「鉄道事業再構築実施計画」(10カ年計画)として国土交通大臣の認定を受けたものであり、今後の収支均衡策として、現在多数を占める近鉄出向社員のプロパー化による人件費の削減や観光需要の取り込みなどを掲げている。

今後、こうした施策がうまくいかなければ、沿線自治体の財政負担が大きくなり、再び廃止論争が持ち上がることになろう。

京急が長男、養老鉄道は次男

以上のような厳しい経営環境の中で、兄貴分にあたる京急電鉄が開業120周年、養老鉄道が全線開通100周年を迎え、両社が連携してキャンペーンなどを行う2019年は、養老鉄道にとっては首都圏のファンを増やす絶好のチャンスとなろう。

今年1月21日に京急川崎駅で行われた「京急開業120周年記念式典」(筆者撮影)

冒頭で紹介した「京急開業120周年記念式典」には、立川勇次郎の曾孫にあたる立川元彦氏も招かれ、「勇次郎にとっては、京急電鉄が長男、養老鉄道は次男。本日の式典で、2人の息子が100年ぶりに再会したことを空の向こうで喜んでいると思う」とあいさつした。

京急と養老鉄道という“兄弟”が連携して、どんな取り組みを打ち出すか。非常に楽しみだ。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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