実は京急電鉄の「兄弟」、養老鉄道の生き残り策 ルーツをさかのぼると両社の創業者は同じ

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1925年の立川勇次郎の死後、養老線は紆余曲折の末、1944年6月に関西急行鉄道と南海鉄道が合併して誕生した近畿日本鉄道(以下、近鉄)の一支線となる。以後、半世紀以上にわたり、近鉄養老線として運行されたが、2000年代に入る頃になるとその維持が難しくなる。

養老鉄道養老駅。養老の滝のほか、インスタ映えが話題の「養老天命反転地」の最寄駅だ(筆者撮影)

養老線の年間輸送人員は1966年の約1684万人をピークに減少の一途をたどり、2000年代後半には700万人を割り込む。年間10億円以上の赤字を出すローカル線は近鉄にとっても重荷となった。

おりしも、2000年3月の「鉄道事業法」の改正により、鉄道事業からの撤退(廃止)が、許可制から届出制に変更され、地方の鉄道路線の統廃合が進められた時期だった。

沿線市町などとの協議の末、2007年に近鉄が100%出資する「養老鉄道」を子会社として独立させ、沿線自治体からの財政支援を受ける形で事業継続することが決まった。具体的には、車両・鉄道施設・鉄道用地は引き続き近鉄が所有し、列車の運行を養老鉄道が担当する、「民有民営」の上下分離方式だ。

「1年定期」の投入

分社化により養老鉄道本社を西大垣駅内に設置したことで、地域に密着した経営ができるようになり、養老鉄道はこれまでにさまざまな取り組みを行っている。

その1つは2008年3月から発売開始した「1箇年通学定期乗車券」である。

「幸いなことに、大垣周辺では公立高校の統廃合の動きが今のところありません」と養老鉄道鉄道営業部次長の山川雄一氏が話すように、養老線沿線には10以上の高校がある。そこで、6カ月定期よりもさらに割引率の高い1年定期を販売し、電車利用のお得感と便利さをアピールした効果もあり、同社の定期利用の減少率は低く抑えられている。また、沿線の海津市の中学生を対象とする美濃松山―美濃津屋間の1年通学定期券「かいづっち養老鉄道応援パスポート」も2011年3月から販売開始した。

2017年度の実績で見ると、養老鉄道の年間輸送人員約620万8000人のうち、通学定期が約314万3000人と全体の過半数を占めている。

「薬膳列車」の運行も養老鉄道の大きな特色になっている。地元で採れた山菜などの食材を使った薬膳料理を車内で食べられる同列車の運行は、旅行会社などへの売り込みを行った成果もあり、運行開始以降の10年間で、延べ3万人以上が利用したという。しかし、残念ながら食事を提供する店舗の都合で、2019年5月以降、「薬膳列車」の運行を一時休止することになっている。

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