「今の仕事が向いてない」と悩む人への処方箋

江戸時代より「天職に出会う」のが難しい現代

ただ、いいことがあれば、必ずある程度は、まずいこともあります。職業選択の自由を得たことによって、私たちが抱えざるをえなくなった苦しみや不安というのは、確実に存在すると僕は思います。それは、ひと言で言えば「働くことに必然性が失われた」ことの不安だと思うのです。

自分の仕事を「微分」しよう

「自分はこの仕事に向いていない」と感じている人は、実は能力というよりは、「なぜ自分はこの仕事をするのか」という「必然性」が感じられなくなっている可能性が高いのだろうと僕は考えます。

なぜ自分がこの仕事をやるのか、どうして会社は、自分にこの仕事を命じるのか。そこが腑に落ちていないから、「向いていない」と感じるのです。

では、どうしたらいいのか。「天職」に出会うことが難しい今の時代においては、今、自分がついている仕事の中に、どうにかして「必然性」を見出すしかありません。そのひとつのアプローチとして、ここでは、自分の仕事を「微分する」という方法をご紹介しておきます。

今やっている仕事がなんとなく「向いていない」と感じている人は、自分に与えられた仕事を、かなり大雑把に捉えてしまっている可能性があります。だからまず、仕事を細かく切り分けていく。そうすると、ひと口に「仕事」といっても、そこには自分にとって「得意な仕事」と「苦手な仕事」が入り混じっていることに気がつきます。

営業部と販売戦略を話しているときには、すごく楽しく仕事ができるけれど、技術畑の人と話すと、どうもうまくいかない。計画を立てたり、スケジュールを切るのは楽にできるけれど、新しいテーマを考えるのは苦手。ビジュアル的なところは得意だけど、文章でまとめるのは苦手……、などなど。

どんな仕事でも、最低でも5つ、もう少し細かく分ければ10ぐらいは、性質の違う作業(タスク)が組み合わさっているはずです。そうやって、仕事を「微分」していく。そして、微分した仕事のどれが得意でどれが苦手なのか、どれが好きで、どれが嫌いなのかということを、それぞれ5段階ぐらいで、自己評価してみるのです。そうするとある部門はうまくいっていて「5」だとしても、別のある部門が「1」や「2」だということが、見えてきます。

そうしたら次は、いちばん得意な「5」の部分を、さらに伸ばしていくことを考えてみてください。実は、これが心理学的には大切なポイントです。多くの人は「2」や「1」を補正しようとするのですが、まずはいちばん、自分の強みとなりうる「5」を強化してみる。なぜなら、強みにフォーカスしていくことで、自分なりの自信をつけていくことができるからです。そうすると自ずと、自分がなぜその仕事をやるのか、やるべきなのか、という必然性が見えてくる。

仕事を「微分」することで、どんな人でも、すべての項目で「5」を取れるわけではないし、「1」ばかりが並ぶ人もいない、ということがわかります。自分の強み、あるいは弱みを知ることは、「なぜ、自分はこの仕事をするのか」という必然性を感じる、大切なステップなのです。

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