楽天、「ドローン」であえてライバルと組む理由 無人配送サービスで先行する京東集団と提携

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京東の副総裁で、無人物流などを手がけるX事業部総裁の肖軍(ショウジュン)氏は、「中国は新技術を応用するスピードがあり、また顧客にも新技術を積極的に受け入れる姿勢がある。だが、海外は文化が異なる。現地政府に適応する過程を踏まなくてはならない」と語った。京東が得意とする無人配送サービスを海外で展開する際に、現地法規制への対応は不可欠。今回、サービスを運用するのはあくまで楽天側だが、自社のサービス体系がどのように対応すれば受け入れられるのかを「学ぶ機会」になる、というわけだ。

中国で運用実績があっても、先進技術の実用化に寛容な中国での実績は効力がやや低い。しかし、規制が厳しく、新技術導入に慎重な日本で自社のドローン・UGVが運用されれば、その実績は中国内で積み重ねたもの以上の効果を発揮する。タイなどで無人配送サービスを転用する際に有効になるだろう。

気になるアマゾンの動き

楽天と京東が提携して無人配送サービスの進展を急ぐ背景には、ECの巨人・アマゾンの動きがある。アマゾンは1月23日に、自社開発した宅配ロボットの実証実験をアメリカ・ワシントン州で始めた。EC市場で勢いを増すアマゾンに無人配送の日常運用で後れをとり、サービス水準で差をつけられてしまうことは、楽天と京東ともに避けたいシナリオであろう。

ジンドンが開発したドローン(記者撮影)

京東の最大のライバルであるアリババグループも、物流網拡張に注力する。同社のジャック・マー会長は2018年5月、物流分野に「1000億元(約1.7兆円)以上の投資をする」と発表。「中国国内で24時間以内に、全世界で3日以内に商品を供給する」ことを目標として掲げる。

ドローン・UGV技術の活用は企業経営を左右する側面だけでなく、社会的な意義も大きい。無人配送サービスが拡大すれば、少子高齢化が進む日本において物流業界の人手不足対応につながる。また、車両でのアクセスに時間がかかる山間部やフェリー運送に頼る離島などへの輸送効率が飛躍する。つまり中国と日本の両国で、過疎地のインフラ問題を解決する一助になる可能性がある。

楽天と京東の成長戦略に加え、社会問題解決に向けた施策としても、今回の提携の行方を注視していきたい。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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