大塚家具、「救世主」が現れても不安が残る理由 久美子社長「会社を立て直すまで続投」と表明

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顧客離れを食い止めるための抜本策はまだ見えてこない(撮影:今井康一)

もっとも、国内での店舗販売が9割超を占める同社の売り上げに、中国でのビジネスがどの程度寄与するかは不透明だ。久美子社長は「(中国でのビジネスが)実際に大きな売上げとして寄与するのは2019年12月期の後半以降」と話すが、本決算と併せて発表するはずだった2019年12月期の業績予想は「不確定な要素があり算定が困難」として公表していない。

業績回復に向けては、国内店舗の売り上げが底入れするかどうかがカギを握ることに、当面変わりはない。昨年秋に実施した在庫一掃セールの反動もあり、1月の店舗売上高は前年同月比で約25%減と苦しい状況だ。今年10月に予定される消費増税後は、消費マインドの冷え込みも懸念される。

この数年で不採算店の閉鎖や店舗面積の縮小を進めた結果、かつての「高コスト体質」は脱しつつある一方、顧客離れを食い止めるための具体的な改善策は見えてこない。2月15日にはヤマダ電機との業務提携も発表したが、現時点では販売ノウハウの提供に向けた話し合いを進めている段階で、提携効果は未知数だ。

「会社を立ち直らせることが責任」

増資で一時的な延命が図れたとはいえ、会社の存続に対する不安は残っている。出資を打診された、ある企業の幹部は「今のままでは金は運転資金に消えていくだけ。経営をこちらがコントロールできる状況にならない限り、出資の意味はない」と手厳しい。実際、2017年11月には貸し会議室を運営するTKPから10億円の出資を受けたが、大塚家具はその後も固定費や配当金の支払いに追われるまま、売り上げ拡大に向けた抜本的な改革は打てずじまいだった。

久美子社長は今後もイージーホームとの資本提携に向けた検討を継続するとし、「年内に提携する可能性も十分ある」との見通しを示した。イージーホーム側も、大塚家具の業績回復状況を見極めたうえで出資比率などを模索するとみられる。

「会社を立ち直らせることが本質的な責任。この提携をしっかりとまとめるまでは社長を抜けるわけにはいかない」と、強調した久美子社長。イージーホームやハイラインズと結んだ縁で、大塚家具を立て直すことができるか。まだ茨の道が続きそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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