遂に実現 10代プロ、石川VS前粟蔵

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キャスター/小倉智昭

 期待の新人、前粟蔵(まえあわくら)俊太が日本ゴルフツアー機構(JGTO)のファイナルQT(クォリファイングトーナメント)を通った。18歳で13アンダー11位は立派な成績。2009年前半のトーナメントには出場できる。プロゴルファーにはレッスンプロとツアープロの2種類存在するが、若い頃は誰もがツアーを目指す。何万人もいるプロの中で、ツアーに出場するのは、ほんのひと握りだ。ジュニア時代に天才と言われた多くのプロが、トーナメントに出たいと思っても、参加資格は厳しい。石川遼のようにアマチュアでトーナメントに優勝し、プロ宣言すれば立派なプロだが、彼は例外中の例外。まれにみる逸材である。

同様に、沖縄・石垣島出身の前粟蔵も、2年前まではゴルフ界の宝と言われていた。現実に、石川がプロで勝った後の世界ジュニアでは、同じ日本チームメンバーとして出場。『とくダネ!』ではハニカミ王子に対してオジギ王子と称されていた。ゴルフ場やティーグラウンドに立つ前、必ず帽子をとって、深々と挨拶するからだ。

石川より1級先輩の前粟蔵はジュニア時代から好成績を収め、茨城・鹿島学園高等学校チームのエースとして、インターハイでは石川らの東京・杉並学院高校を押さえて優勝を飾っている。そして、高校在学中の昨年、JGTOのQTを受験し、早くからプロ入り宣言をしていた。

ただ、QTは1次から始まり4次までで200名に絞られる、狭き門である。プロのツアーを目指す若手、研修生やすでにプロの有資格者、トーナメントでシード権を取れなかった者、つまり下から上を狙う将来有望な若者とやや峠を越したベテランとが同じ土俵で戦うのだ。特にベテランは死活問題である。ファイナルQTで4日間トータル上位90名が残り、あとの2日間に駒を進める。

昨年度のQTで、前粟蔵は3次まで終始トップグループだったし、誰もがプロ確実と思っていた。ファイナルQTに進出できるのはプロに限られるため、彼は12月のファイナルQT前に高校を中退し、プロになることを宣言してしまった。すでにプロツアーに1勝して、1年以内ならいつでもプロ宣言できる石川より、1週間だけ早く、会見でプロを表明してからファイナルに臨んだのだ。

ところが3次までの好成績とは別人のようなゴルフで最下位近くまで沈み、ほとんどの試合に出られない状況に陥ってしまったのである。若さとプレッシャー、彼自身が「何もしない間に試合が終わった」と振り返っていたくらいである。したがって今年はスポンサー推薦などでほんの数試合に出場したのみ。賞金も二十数万円だけであった。

石川とはまるで別の裏街道を歩き、一方は通学しながら華々しくプロ賞金ランク5位。前粟蔵は通信教育を受けながら、人の車に乗せてもらい練習場へ。次シーズンの2人の対決に注目するのは私だけではあるまい。

キャスター/小倉智昭(おぐら・ともあき)
1947年秋田県生まれ。東京12チャンネル(現テレビ東京)アナウンサー出身。76年フリーに。現在は『とくダネ!』(フジテレビ系)や『嵐の宿題くん』(NTV系)、『小倉智昭のラジオサーキット』(ニッポン放送)の司会を務めるなど、幅広く活躍中。
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