私鉄は「梅田」なのに、なぜJRだけが「大阪」駅? 環状線の内側に巨大ターミナルがある不思議

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関西は私鉄王国として知られている。大阪環状線をはじめ、神戸線や京都線のほか、東西線、学研都市線、大和路線などのJRの路線が敷かれているものの、それ以上に私鉄の勢力が強いからだ。

その構図がはっきり表れているのが大阪の都心部である。東京の私鉄のターミナル駅は、大半が山手線の駅とセットのような形になっていて、山手線の内側には入り込めていない。かろうじて内側にあるのは、京成電鉄の京成上野駅、西武鉄道の池袋駅、西武新宿駅などごくわずかだ。

ところが、大阪の都心部の路線図を見ると、南海電鉄の難波駅や阪神電鉄の梅田駅、京阪電鉄の中之島・淀屋橋駅、近畿日本鉄道の大阪上本町駅など、環状線の内側に私鉄各社のターミナル駅が存在する。

東京の私鉄が山手線の内側へ入り込んでいないのに対し、大阪では大阪環状線の内側に私鉄の各路線が入り込み、梅田や難波、上本町など巨大なターミナル駅を造っているのが特徴である(画像:国土地理院の地理院地図に加筆)

この違いは、大正期の行政による鉄道整備にある。東京の山手線が環状運転を始めたのは1925(大正14)年。大阪環状線が完成した1961(昭和36)年の36年前である。この当時、東京の山手線内では、すでに路面電車(のち統合、東京市電)が張り巡らされ、十分に市内交通の役割(のちに地下鉄が代替)を担っていた。そのため政府は、私鉄が市内へ延伸しようとしても認可を与えず、山手線の内側へ入ることをブロックしていたのだ。

関西はなぜ「私鉄王国」なのか?

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長らく環状線がなかった大阪では、私鉄が国鉄の路線に阻まれることなく、都心部へと路線を延ばしていくことができた。大阪でも東京同様に、市内交通は大阪市が行うという市営モンロー主義があったが、東京のように山手線でブロックされていないため、国鉄路線という物理的な壁はなかったのである。

そしてその後、大阪環状線が完成し、都心部へ乗り入れていた私鉄は自然と環状線の内側にターミナル駅を持つ形になったというわけだ。

つまり、都心部への路線を国鉄より先行して敷くことができた私鉄が、国鉄より高い利便性を獲得し、強い勢力を持つようになったのである。

小林 克己 旅行ライター

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こばやし かつみ / Katsumi Kobayashi

1975年、早稲田大学教育学部地理歴史専修卒。海外旅行地理博士。日本旅行記者クラブ個人会員、綜合旅行業務取扱管理者。世界遺産、グルメ、鉄道などをテーマに、取材旅行の延べ日数は海外約6年間、国内約5年間に及ぶ。主な著書に、『JR乗り放題きっぷの最強攻略術』(交通新聞社新書)、『50歳からの青春18きっぷ途中下車の旅』(河出書房新社)など。

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