ゴーン氏「同じ容疑で再逮捕」は問題ないのか 勾留は越年の可能性、長期化に海外から批判

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東京地検特捜部は12月10日、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長(右)とグレッグ・ケリー前代表取締役、法人としての日産を金融商品取引法違反の罪で起訴した(撮影:鈴木紳平)

東京地検特捜部は12月10日午後、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏と前代表取締役のグレッグ・ケリー氏、それに法人としての日産を、ゴーン氏の報酬を有価証券報告書に過少に記載していたとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴した。東京地検は起訴と同時に、直近の3年間でも報酬を過少に申告していた疑いで、ゴーンとケリー氏を再逮捕した。

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起訴は、同日午前の証券取引等監視委員会による東京地検への告発を受けたものだ。証券取引等監視委員会によれば、ゴーン氏とケリー氏、日産は共謀して、2011年3月期〜2015年3月期の5期分の有価証券報告書に、実際にはゴーン氏の役員報酬が計98億5500万円だったにもかかわらず、計49億8700万円と、48億円あまり過少に記載していた。

       実際の報酬    虚偽記載の報酬
2011年3月期 17億7700万円   9億8200万円
2012年3月期 18億9400万円   9億8700万円
2013年3月期 20億2500万円   9億8800万円
2014年3月期 19億4600万円   9億9500万円
2015年3月期 22億1300万円   10億3500万円

 合計     98億5500万円   49億8700万円  

日産には最大49億円の罰金の可能性も   

このうち2011年3月期については法人としての日産に時効が成立している。法人への刑罰は1件につき7億円以下の罰金なので日産自動車には4期分の28億円以下の罰金が科せられる可能性がある。個人であるゴーン氏やケリー氏には時効が成立していない。個人への刑罰は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方で、容疑が複数の場合、懲役は最大1・5倍という上限があるので最大15年以下の懲役が科される可能性がある。罰金は単純に足していくので5期分、最大5000万円の罰金となる。

日産のグローバル本社。法人としての日産も金融商品取引法違反の罪で起訴された(写真:日産自動車)

ゴーン氏とケリー氏の再逮捕の容疑は、起訴と同じ有価証券報告書の虚偽記載だ。東京地検によれば、ゴーン氏とケリー氏は2016年3月期〜2018年3月期の3期にわたってゴーン氏の報酬が71億7400万円だったのに29億0400万円と過少に記載した。

この容疑でも起訴されれば、日産自動車は7期分で最大49億円の罰金が科されることになりそうだ。ゴーン氏やケリー氏は、最大で15年の懲役は同じだが、罰金は8期分で最大8000万円またはそれらの両方が科されることになりそうだ。

なぜ同じ容疑なのに期間を2つにわけたのか。12月10日の会見で尋ねると、東京地検の久木元伸・次席検事は「捜査に関わることなので答えられない。当然ながら適正な司法審査を経ている」と答えた。「逆に2回に分けなければならなかった事情は何か」と食い下がると、「公判の争点に関わるので答えを差し控える」と久木元氏は述べるのみだった。

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